Lens.130 ページ10
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色々あった昨晩。
色々。そう、色々。
だからこそ昨日のことは忘れて、今日を乗り切る。
今日で最後だ。
ようやく決心がついた。
ブランドには興味が無いけれど秘書は社長の顔でもある。その辺りのマナーは当然大切にしなくちゃいけなくて買った高いブランド物のスーツ。他一式。
朝早く起きて、社長の迎えに行かなくちゃ。
朝が弱い社長は少し機嫌が悪い。
だから朝は出来る限り話しかけない。それを社長が望んだから。
毎日毎日山ほどくる仕事。
会食やらの日程を考えるのに手帳はどんどんボロボロになる。
そういうことが無くなって。
他社への挨拶に走り回らなくても良いのかと。そう考えると楽なところはあるが。
「……泣かない。」
バチンと頬を叩いて、ネクタイを締めた。
さぁ。逃げるんじゃない。
進むために、捨てなくてはいけないもの。
守るために、捨てなくてはいけないもの。
誰も社長に守れなど頼まれていないけれど、俺が社長の足でまといは死んでも嫌だから。勝手なことだとしても、もういい。
忙しくない日々は想像出来ないけれど、秘書を辞める以上会社に残るわけにもいかないから。
寂しいけど、雅紀と潤ともお別れだ。
寝ぼけてぽわぽわしている智くんに頑張れ。と言われ、いつも以上に気を引き締めて家を出て、社長の家へ向かった。
一応退職願なるものは書いてきた。
泣きながら書いたからぐちゃぐちゃだけれど、止まらなかったのだから仕方が無い。
社長に会いにくい空気など、知らないふりをして。
視界に映ってきた社長のお高い家に。
見慣れた扉に。インターフォンを押して。
ガチャ、と開く扉。
「翔さん、」
「お迎えに来ました。準備は出来てますか?社長。」
「えっ、あ、ちょっとまって、」
いつも通り。普通に。違和感を感じないように。
社長の家に少しでも上がることはなく、社長が出てくるのを外で待った。
小林に伝えなくては。
お望みの通り辞めてやるから社長の足を引っ張るような行為は必ずやめろと。
そうじゃなくては、自分が辞める意味がなくなる。
駐車場まで降りて。
やっと後部座席に座った社長を確認して、運転席に座る。
「…翔さ、」
「いつもより少し遅れました。急ぎますね。」
出来る限り、未練を断ち切るように。
彼の将来の妨げにはなりたくないのだから。
溢れそうな想いを無理やり隠して、今日、俺はあなたの前から去る。
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adg567(プロフ) - 2人を味方につけた社長は無敵ですね今後の展開も楽しみにしてます(^^)/ (2016年9月4日 20時) (携帯から) (レス) id: ae6ca517f2 (このIDを非表示/違反報告)
ミラノスカイ(プロフ) - adg567さん» やっと伝えました秘書さん〜( ; _ ; )物語に入り込んでくださって本当に嬉しいです( ; _ ; )楽しみにしていてくださいっご期待に添えるよう頑張ります! (2016年8月12日 17時) (レス) id: b640a89147 (このIDを非表示/違反報告)
ミラノスカイ(プロフ) - ゆいぴょんさん» ずっと読んでくださったんですか!!有り難き幸せ〜( ; _ ; )そうなんですやっと言いました!長かったです本当もう手のかかる秘書さん( ; _ ; )笑 応援ありがとうございますっ頑張ります☆ (2016年8月12日 17時) (レス) id: b640a89147 (このIDを非表示/違反報告)
adg567(プロフ) - わ〜!とうとう気持ち伝えちゃった(*≧m≦*)でもまだまだ安心できない感じですね!!続き楽しみにしてます♪ (2016年8月12日 11時) (携帯から) (レス) id: ae6ca517f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいぴょん(プロフ) - この作品、ずっと読ませてもらってます!ついに!秘書さんがホントの気持ちを社長に伝えましたね!すごく切ないけどドキドキしてしまいました…!続きが気になるのでこれからも更新頑張ってください!応援してます!! (2016年8月12日 8時) (レス) id: ceaba55208 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミラノスカイ | 作成日時:2016年6月12日 19時