Lens.143 ページ23
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「……社長、」
「いや、…ん、分かってる、分かってるよ、ちゃんと、これは受け取ったし、受理もする、」
社長の手にあるくしゃくしゃになった辞表。
ほっ、と、安堵と同時に寂しいと、思ってしまったり。
しゃがみこんだ社長に目を合わせられるように俺もしゃがむと、社長はバツが悪そうに足に顔を埋めてしまった。
伸びた手にある辞表はスルリと落ちてしまいそうで、補助をかけるように手に少し触れればびくりと跳ねた社長の手。
「…………ッ、」
静かな空間に響いてしまった、聞こえてしまった社長の漏れた声はやっぱり震えていて、
これ以上ここにいたら離れ難くなってしまうだろうか。
……いや、そんなのもうとっくになっている。
けれど、今は、まだ、あと少しだけ、時間は俺がここにいることを許してくれるだろうか。
一度漏れてしまった社長の声はよく聞けばすんなりと耳に入ってくる。
「……翔さん、さぁ、」
「はい。」
「……ほんと、ずるいことしてくれますね、」
「……はい。」
グイ、と俺が視界に入れる前に自らの袖で涙を拭ってしまった社長の目は、赤い。
「そういうの、後から言われたら結構……っていうかかなり、クる、」
あーーこんな顔見せるつもりじゃなかった、と呟く社長は再び俺に視線を合わせると、
俺の頬に手を添えて、ゆるゆると撫でる。
「…社長、」
「うん、」
「今まで、ありがとうございました。」
「うん、」
「短い間でしたし僕はあなたに何かをしてあげることも何かを変えてあげることも出来ませんでした。」
「気づいてないだけで、ずいぶん、周りは変わったと思うけど。」
「言葉遣いも、秘書らしく丁寧に使えなくてごめんなさい。」
「口悪い翔さんも、好きだよ、」
「変人なんて言ってごめんなさい。」
「そうだな、それは失礼ですよ、」
「社長、あなたを……二宮和也、を、好きになってしまってごめんなさい。」
「………、」
「僕はあなたを守りたい。あなたが大切だから僕は秘書を辞めさせていただきます。あなたの家に置いた秘書に関わった物を持ち帰れないのが残念です。あと、送迎が出来なくてごめんなさい。」
頬に触れていた手が、落ちる。
「社長、」
「…………うん、」
「さようなら。」
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adg567(プロフ) - 2人を味方につけた社長は無敵ですね今後の展開も楽しみにしてます(^^)/ (2016年9月4日 20時) (携帯から) (レス) id: ae6ca517f2 (このIDを非表示/違反報告)
ミラノスカイ(プロフ) - adg567さん» やっと伝えました秘書さん〜( ; _ ; )物語に入り込んでくださって本当に嬉しいです( ; _ ; )楽しみにしていてくださいっご期待に添えるよう頑張ります! (2016年8月12日 17時) (レス) id: b640a89147 (このIDを非表示/違反報告)
ミラノスカイ(プロフ) - ゆいぴょんさん» ずっと読んでくださったんですか!!有り難き幸せ〜( ; _ ; )そうなんですやっと言いました!長かったです本当もう手のかかる秘書さん( ; _ ; )笑 応援ありがとうございますっ頑張ります☆ (2016年8月12日 17時) (レス) id: b640a89147 (このIDを非表示/違反報告)
adg567(プロフ) - わ〜!とうとう気持ち伝えちゃった(*≧m≦*)でもまだまだ安心できない感じですね!!続き楽しみにしてます♪ (2016年8月12日 11時) (携帯から) (レス) id: ae6ca517f2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆいぴょん(プロフ) - この作品、ずっと読ませてもらってます!ついに!秘書さんがホントの気持ちを社長に伝えましたね!すごく切ないけどドキドキしてしまいました…!続きが気になるのでこれからも更新頑張ってください!応援してます!! (2016年8月12日 8時) (レス) id: ceaba55208 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミラノスカイ | 作成日時:2016年6月12日 19時