カメラの向こうのあなたと

Happy Valentine's-Day [東海 としみつ] ページ26

2月13日。
明日はバレンタインということで一応皆に何かお菓子を作ってあげようと思っているのだが、1個だけ悩みがある。

｢アイツに特別なのあげた方がいいかなぁ…｣

アイツというのは、としみつのこと。私は彼のことが好きだ…なんか認めたくないけど。
せっかくだし、頑張ってみるか。

｢あ、でも、としみつ何好きなんだろ……りょうくんなら分かるかな｣

急いでりょうくんにLINEを送った。数分後、返事が来た。

｢何でも好きだってよ〜。明日あげるの？頑張れ｣

何でもが一番困るが、仕方ない。応援もしてくれたし、聞いてくれたし、一応お礼をした。
何にしようか、と悩んでいたらふと学生時代、友達とお菓子を交換した時に作ったガトーショコラが、かなり上手くいったことを思い出した。それならきっと、としみつも喜んでくれるだろう。
私は材料を買いに外へ飛び出した。

…
2月14日。てつや宅。
てつや、虫さん、りょうくんの3人はいるが、としみつの姿が見えない。

｢あれ、としみつまだ来てないの？｣
｢うん、まあどうせすぐ来るでしょ｣

相変わらず遅刻常習犯のとしみつ。何でアイツが好きなんだ、私。

｢としみつに渡したいのあるのに…｣
｢恋する乙女だねぇ｣
｢は！？うっざ。てつやにはお菓子あげないから｣
｢許してくださいA様｣
｢えー、まあいいけど…これ皆の分ね｣
｢ありがとう〜｣

虫さんに大きめの紙袋を手渡したのとほぼ同時くらいに、としみつが来た。やっと来た…。
彼がリビングに入ってくると、てつやが何か思いついたように口を開いた。

｢あー、としみつは大遅刻してきたから、このAがくれたお菓子、向こうで俺たちだけで食べちゃおう〜！｣
｢そうしようそうしよう〜！｣
｢わーいわーい！｣

何も状況がわからないとしみつはポカンとしている。3人は去り際に口パクで｢頑張って｣と言ってきた。

｢何なんだあいつら…｣

ここにいるのは私ととしみつの2人だけ。普段はどうってことないのに、今はやたらと緊張する。

｢ね、ねぇ、としみつ｣
｢ああ、何？｣
｢あの…その…これ、受け取ってください｣

彼は一瞬驚いたような表情を見せたあと、くしゃっと笑った。あ、かっこいい。きっと私はこれが好きなんだ。

｢ありがとな｣
｢あ、あとね、としみつ…実は私ね｣

心拍数が上がっている。頬が熱い。上手く喋れなさそうだ。

｢としみつが、好きです。｣

静かな部屋に、大好きな人の声が響いた。

｢俺も、好きだよ。｣

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