ニジュウゴ! ページ26
カラオケに入り、私たちは荷物を置いて、飲み物を取りに行った。
いつもは飲み物係をじゃんけんで決めるのだが、今日は全員で取りに行った。
飲み物を取って戻ると、どこからか、聞き覚えのある声がした。
「徹…くん…?」
そう呟いた声は、誰に拾われることもなく、床へと落ちていった。
岩泉も、花くんも松くんも気づいていないようだった。
いつもなら、徹くんが盛り上げるカラオケに、今日は徹くんがいない。
少し重たい雰囲気の中、カラオケを進めるには無理があった。
「なあ、なんで及川が部活出禁になったか知ってるか?」
花くんが聞くと全員首を振った。
「休憩明けに遅刻したから?」
そう私が言うと、そんなことで出禁にはならないだろと、岩泉と松くんが言った。
それは、私もわかっていた。
「A、キャプテンと仲良いけど、何も聞いてないのか?」
と、花くん。
「聞いたけど、教えてくれなかったんだ」
「そうか…」
花くんの相槌を最後に、私たちの間に流れるのは沈黙。
カラオケ機材のCMや、他の部屋から聞こえる音の中に、聞き覚えのある歌声がした。
さっきのは勘違いなんかじゃない。
「ねえ、やっぱ、徹くんがいる気がする」
私はそう言って、部屋を飛び出した。
「A!!」
私を追いかけて、岩泉も部屋を出た。
花くんと松くんは、事態が掴めていなかった。
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作者名:とまと | 作成日時:2022年9月19日 1時