【オリジナル】たいせつなひと (ページ38)

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「ねー、Aさん」

「ん？」

今は文化祭の買い出しで、杉村くんと百均にいる

つまりはパシリだ

「蒼琉に彼女できたって知ってた？」

「…え？」

持っていたものを思わず落としてしまった

予想外の言葉だったから

「俺も、さっき知ったんだけどね」

「蒼琉から聞いたの？」

「蒼琉の彼女から」

「そう、なんだ…」

衝撃とか

驚いたとか

嬉しいとか

羨ましいとか

そんな単純な感情ではなくて、

よくわからない

なにか

ドロドロした感情が

私の心を満たしている

「じゃあ、私もそろそろ蒼琉離れしなきゃかな」

「蒼琉がよくても、彼女がね」

「そうなんだよね」

裏切られた？

いや、誰とも付き合わないなんて約束してない

じゃあいったい、どんな気持ちなんだろう

彼女ちゃんに彼を奪われた

そうなんだけど

そうじゃない

心がすごくモヤモヤする

苦しい

「俺も初めて蒼琉の彼女の子と話したけど、

あの子結構度胸あると思うよ」

「え？」

「だって、初対面の俺に

『私、蒼琉くんと付き合ってるんです

蒼琉くん、Aちゃんって子と仲良いから、

少し不安なんです

君、Aちゃんと仲良いから、

Aちゃんに蒼琉くんと仲良くしないでって

言ってほしいんだけど』

なんて言わないでしょ」

「私、さっそく嫌われてるぅ～」

二人で笑った

でも

心から笑える状況ではなかった