拾 ページ10
義勇side
錆「まず…そうだな、家族のことは覚えているか?」
『…覚えてない』
錆「…Aが覚えていたのは自分の名前だけか?」
『うん、名前だけかな』
錆「そうか、では俺達と出会う前の話をしよう」
Aは父親と母親との3人家族だった
特別贅沢を出来るほど裕福な家庭ではなかったがとても幸せに暮らしていたそうだ
しかしその幸せは鬼の手によって壊されてしまう
家族みんなが寝静まった頃、鬼が家の中に侵入してきた
いち早く異変に気づいたAは急いで2人を起こすが
起きてすぐに鬼が部屋の中に入ってきてしまった
父親は鬼に向き合い、母親はAを窓から逃がした
Aが最後に聞いたのは2人の断末魔と血が飛び散る音だったらしい
2人が救ってくれた命を無駄にする訳にはいかないと
無我夢中で逃げたAだったが、気づけば背後に鬼が近付いていた
そんな絶体絶命の時に救ってくれたのが後に先生となる鱗滝左近次だったのだ
錆「…と、まぁここまでが俺たちと出会う前の話だ」
『そんなことが…』
話が終わる頃にはAの目から涙が零れ落ちていた
無理もない、肉親が鬼の手によって殺されてしまったなど思い出したくないだろう
錆「これは前にAから聞いた話だ」
『思い出したわけではないんだけど、知ることが出来て良かった
このまま家族のことを知らずに生きていくのが嫌だったし、お父さんとお母さんに救われたこの命を大切にしようと思えたから…』
胸に手をあて泣き笑いを浮かべるAの姿が
昔と重なった
やはり記憶が無くなってしまっても
AはAなんだな
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作者名:すー | 作成日時:2021年10月18日 22時