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書類の手直しを手伝って貰う礼として約束を取り付けた俺は、気分が高揚していた。
俺以外に人が居る事等忘れてガッツポーズ。
控え目に中也さん…?と声を掛けられてハッとする。
「あの…あんま云いたくないんすけど、態とミスしてAさんと話をする機会を作るって、逆効果じゃないですかね。」
「結果的にデートに誘えただろ!それに、こうでもしねェと彼奴と話す機会なんて無いに等しいんだよ!」
「携帯で連絡取り合う、とか…。」
「樋口。手前は分かってねェ。彼奴は仕事の虫だ。仕事中に携帯を見る事はねェ。俺が連絡しても返信はねェ。云わせンなッ!」
顔を片手で覆って落ち込む素振りを見せる。
では中也さんはあの女に嫌われていると。
等と芥川の容赦の無い言葉が俺の胸に突き刺さる。
「芥川、一応云っておくが彼奴はお前より上だからな。言葉遣いには気ィ付けとけよ。」
「…はい。」
「じゃあ何でAさんは中也さんにはタメ口なんすか?」
「俺より歴が長ェのと、俺の元教育係りだから。つっても外では幹部呼びだし敬語になる。きっちりしてんだよ、彼奴は。」
いつからだ。
彼奴が俺の名前を呼ばなくなったのは。
いつからだ。
俺が彼奴の名前を呼ばなくなったのは。
また、聞きてェな。
彼奴の口で、声で、俺の名前を…。
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2024年2月5日 20時