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また始まった。

そう思うのは二人の男女を見る数人には見慣れた光景。



「提出期限書いてあるでしょ!」

「だからそれまでには出してンだろ!」

「私が取りに来たのよ!こういう時だけミスが無いのも腹が立つわ!」

「俺はやれば出来るんだよ。」

「そう。やれば出来るのね。」



突然、女の表情がすん、と無表情になる。

男は書類から顔を上げて女を視界に入れると口元を引きつらせる。

女は部屋から出て行き、十分程経った頃、少し厚みのある書類を抱えて戻ってきた。

そして、ドンと音を立ててデスクに書類が置かれる。



「これ全部、期限までに手直しして再提出。」



女の言葉にサー、と男の顔色は血の気が引いたように青くなる。



「お、おい…流石にこの量は…、」

「やれば、出来るのよね?」

「…いや、でも俺は他にも、」

「貴方のミスよ。」



云い返す言葉が見つからないといった男。

用件は済んだと部屋を出て行こうとする女を男が慌てて追い掛ける。



「待てって!無理だ!俺一人じゃ無理!」

「部下にでも手伝って貰いなさいよ。」

「なら…、お、お前と…二人で…、」

「如何して私が手伝わないといけないの。」

「礼はする!飯でも!物でも!」

「物ねぇ…、」



顎に指を当てて考える仕草をする女に男の心中はハラハラとドキドキの二つが混じっていた。



「最近、新しい靴と鞄が欲しいと思ってたの。」

「贈る。」

「美味しいご飯も食べたいわ。」

「一流のコースを予約する。」

「興味無い。居酒屋がいいわ。」

「はい。」

「もう一つ、云う事があるでしょ?」

「ありがとう…ございます…。」



男は女に頭が上がらない。



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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2024年2月5日 20時

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