. ページ4
.
隣に居る女、Aと一件の宿屋を見上げる。
「如何して私が…。」
「そりゃ此方の台詞だ。」
姐さんに心労を癒せ、二人で温泉にでも行けと云われたのは記憶に新しい。
Aはぶつぶつと何か文句を云っているが俺はそれどころではなく、今も、心臓がドキドキと鼓動を立てて緊張していた。
此処で突っ立ってても仕方ない。
中に入るかと足を進めた。
「割と広いじゃねェか。」
「……。」
受付を済ませて部屋に案内された後の一言目。
「なんで一部屋なのよ…。」
「経費で下りてンだ、文句云うな。」
ため息をついて観念したAは荷物を下ろす。
そして、荷物からあろう事かパソコンを取り出して何やら仕事をし始める姿に驚いた。
「おい、手前…何してンだ。」
「仕事に決まってるでしょ。私がこうしてる間にもメールは溜まるし、情報は上書きされていくの。」
「部下に任せてんじゃねェのか。」
「任せてるわよ。それでも私の確認が無いと進めなられない仕事だってある。私が手を止める訳にはいかないの。」
こんな物云いをするAに腹が立った。
温泉まで来て、俺よりも仕事を優先する事に。
「進めた分保存しろ。」
「は？なんで。」
「いいから。」
しぶしぶというふうに手を動かして、保存したの言葉を聞いて直ぐにパソコンを閉じてAの手元から奪い取り、そして俺の鞄に入れた。
「何をするの！返して！」
「温泉に浸かって疲れ取ってこい。」
「私は別に…！」
「幹部命令だ。行け。」
幹部命令と云えば此奴は逆らえない。
階級は勿論、俺の方が上だからだ。
何か云いたげな口元を作りながら準備をしてから部屋を出たA。
「倒れられたら心配になんだろ、莫迦が…。」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 7人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：汎用うさぎ
| 作成日時：2024年2月5日 20時
