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Aには絶対に気持ちは伝えない。
そう決めたのに決意が揺らぐ。
「貴方、変人ね。」
「如何とでも云ってくれ…。」
仕事を手伝って貰った礼として、休みを合わせ、待ち合わせにてAを待っていたのだが、
「あ"ぁ…、がわいい…。」
普段、見慣れない私服姿に胸を打たれた。
ずきゅんといとも簡単に撃ち抜かれた俺は建物の壁に額を預けていた。
だって、可愛い。可愛すぎる。
「早く行きましょ。良いものが無くなってしまうわ。」
「…ん。」
移動しなければ買い物は出来ない。
振り返ってもう一度、Aを視界に入れる。
「結婚してェ…ッ。」
「え、なに気持ちの悪い事云ってるの…?」
つい、心の声が漏れてしまった。
それに対して気持ち悪いと云われるが、今日は心が傷付かない。なんていい日だろうか。
「あー、まず何見る。」
「靴かしら。どんな服でも合うような落ち着いたデザインがいいわ。」
「成る程な。取り敢えず行くか。」
先に歩き出すと後ろをてとてと付いてくるA。
「可愛いかよ…。」
きょろきょろと辺りを見回し、俺と距離が離れたら離れた分、駆け足で距離を縮める。
何故Aが街を物珍しそうに眺めるのか。
答えは簡単。
休みの日はずっと家。
必要な分は通販という生粋の引きこもりだ。
人と話すのも本当は得意ではない。
だから、
「あ、あんまり早く行かないでよ…!迷子にでもなったら責任取って探してくれるの!?」
人が行き交う外は苦手らしい。
まあ、こうなるのは想定済。
「握れば、マシなんじゃねェの。」
差し出す手をじっと見つめるA。
「何が悲しくて貴方と手を繋がないといけないの。」
「もうどっかで野垂れ死ね。」
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2024年2月5日 20時