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約束…。
兄と太宰君が…。でも、二人に接点なんて…。
「Aちゃん、よく考えて。お兄さんが如何してAちゃんをこの家から逃がしたのか。」
「…知らないよ。」
「君に幸せになって欲しかったんだよ。だけど、今の君の表情からは幸せなんて言葉は出てこない。諦め、絶望。負の感情ばかりだ。私と出会った時と同じ。
でも、いつからか君は少しずつ笑うようになっていった。如何してかな。」
如何して…。
そんなの覚えてないよ…。
「私は直ぐに気付いたよ。Aちゃんは恋をしたんだって。」
「…え。」
「相手は私の大嫌いな中也、でしょう?」
「っ…。」
「ねぇ、如何して中也を好きになったの?」
如何して…、如何してだっけ…。
目を閉じて昔を思い出す。
あれは確か、太宰君が私に押し付けた大量の書類を抱えて運んでいた時、何かに躓いて盛大に転んで…。
そこで偶然に通り掛かった中原君が一緒に拾うのを手伝ってくれて…、
『げっ、こりゃ太宰の野郎の書類じゃねェか。手前も彼奴に仕事押し付けられて災難だな。ま、身体壊さねェよう頑張れよ。』
彼から向けられた笑顔が忘れられなくて、いつの間にか目で追っていて、周りから聞こえてくる恋愛話に、私は彼が好きなのだと自覚した。
「君の幸せはこれから嫁ぐ人の所にある?それとも、君が望む幸せは別の場所にあるの?」
「…やめて。」
「…今でも中也が好きなんだね。」
「やめてよ!!」
思わず耳を塞いだ。
もう何も聞きたくない、考えたくない。
「その大きな声で云ってごらん。助けてって。」
「っ…。」
「君じゃない私でも分かる。本当は行きたくないんでしょ。本当は中也のそばに居たいんでしょ。どんな形であっても。」
「っ…、」
溢れる涙はもう拭いきれない程に流れ落ちる。
そこで部屋の外から騒がしい声が聞こえてきて、太宰君にはこれでもう最後だよ、と心に囁かれた。
「……助けてっ!」
「いいよ。」
その瞬間、外と部屋を隔てていた壁は大きな音が鳴り響いた後、脆く崩れ落ちた。
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鈴神(プロフ) - 本当に本当に今読ませて頂いてる唯一の夢小説ですが情報過多すぎて、、このお話に激重感情抱いてます、、二人が幸せになりますように。 (11月23日 20時) (レス) id: c20e30a6a0 (このIDを非表示/違反報告)
そこら辺の壁(プロフ) - 初コメ失礼します!中也さんイケメンとキャッキャしてたら、まさかの展開でビックリです……!これからどうなっちゃうの〜〜!?という気持ちがいっぱい過ぎて……。主様のペースで更新頑張って下さい!楽しみにしています! (11月23日 20時) (レス) @page32 id: 1836c9208c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2023年11月10日 12時