247話 ページ48
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少し酔いが冷めたみたいな樋口さんが、中也は普段こうなのかと訊いてきて私は頷く。
「よく甘えてくれるわ。でも、中也は自分が甘えてるのは誰かに見られたくないみたいで…。」
「今の、甘えてたんスか…?」
「ええ。いつもはキスをちゅーなんて云い変えないもの。酔ってるのもあったと思うけど…。」
そこが可愛いのよねなんて頬に手を当てて思う。
普段皆に見せない姿を私だけが見る事が出来るのは、私の特権で、私に心を許してくれているという証。
これ程嬉しい事はないわね。
「だから内緒。ね?」
「は、はい…。」
人差し指を口に当てて片目だけ瞑ってみせた。
素直に返事してくれる立原君にありがとうとお礼を云って私も皆の輪に混ざる。
「広津さん、どうぞ。」
「これはこれは。頂きます。」
お酌して回って、料理も無くなり夜もふけてきた頃、皆は迎えを呼んで各々帰って行った。
私は後片付けを済ませて、ご飯の予約とお味噌汁だけ作り寝室に向かった。
お酒の所為で熱いのだろう。布団を蹴飛ばした豪快な寝相の中也に布団をかけ直してから押し退けて私もベッドに横になる。
「大好きよ、中也。」
そっと呟いて出来る限り中也と寄り添い目を閉じた。
彼の体温でゆっくりと眠りにつけた。
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2023年5月28日 11時