242話 ページ43
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ある日のお昼頃、私が夕食の買い出しに出ていた時、一本の電話がかかってきた。
相手は中也からで、まだ仕事中のはずと思いながら通話牡丹を押した。
「どうしたの?」
『芥川と銀が家に来たいンだと。』
「龍ちゃんと銀ちゃんが?」
『おー、Aの飯が食いたいっつってな。』
二人が私の料理を食べたい…。
そんなの私には断る理由なんてないし、むしろ泊まってくれたっていい。
「いいわよ。二人の分も用意しておくわ。」
『悪いな。じゃあ、そういうこと…あ?何だ樋口。』
私には今、中也が誰とどんな会話をしてるか分からず、中也が戻ってくるまで待つ。
そして戻ってきた時には、凄く云いづらそうに言葉を溜め込んだ。
『樋口と…、あと立原、広津も来たいって云ってやがんだけど…。』
「あら、大人数ね。」
『無理ならいい。つうか無理って云え。無理だろ?』
『なんでっスか中也さん!』
『幹部殿がそこまで仰るのであれば一度食べてみたいと思うのも人の性というものでしょうな。』
『そうですよ!ずっと三上さんの料理自慢してるじゃないですか!』
『あー!余計な事云うンじゃねェ!!』
自慢してたんだ…。
いつも美味しいとか云ってくれるけど自慢する程気に入ってくれてたなんて知らなかった。
それなら、と私は中也に呼んでもいいよと伝えた。
中也が自慢する料理を皆に出したい、期待に応えたい。
『…分かった。適当でいいから無理するなよ。』
「うん、頑張る。」
『適当でいい。』
適当でいいと念を押して中也は通話を終わらせた。
私も通話が終了した画面を眺めて、気合いを入れて食材選びに努めた。
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2023年5月28日 11時