220話 ページ21
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今の私の心情はわくわくドキドキ。
あの可愛い中也を目の前で見る事が出来る。
彼女達は何が行われるのか分かっていない様子で背を向けた中也を見ている。
そしてその時は来た。
脚を内股にした中也はくるりと振り返って右手で指差した。
「二度目はなくってよッ!」
「…。」
「…。」
「…。」
「笑えよッ!」
せめて手前だけでも笑えや、と怒る中也に笑ったら負けかなと思って、と目線を逸らしながら云う。
少しの間の後に、小さく誰かが笑うのが聞こえた。
声の主は先程まで中也を慕っていると云っていた令嬢。
「中原様にもこんな一面がおありなのですね。」
目尻に残っていた涙を指で拭き取る彼女の表情はどこか吹っ切れたように見える。
お名前をお伺いしても?と訊かれて、答えようとした私の肩に手を回された。
「中原A。俺の嫁だ。」
「え。」
「…Aさん。私は応援など致しません。ですが、お幸せになってください。中原様がお側にいてそのような事はありえませんが。」
「はい。二人で幸せになります。」
深々と頭を下げた女性の後ろで、受付の女性も頭を下げて二人はこの場を去った。
…私の中で一つ疑問が浮かんだ。
中也が以前、女性と話をつけたって云っていたのは受付の女性よね…?
そしたらもう一人の社長令嬢とは話はしていない…?
「中也の嘘つき。」
「あ?また嘘つき呼ばわりかよ。今度は何だ。」
「中也、自分でモテないって云ってたのに私以外に二人も女性誑かしてるじゃない!」
「誑かすって云い方やめろ。…考えてみればそうだな。俺もいい男だから当然と云えば当然か。」
「…ちょっとその辺で軟派されに行ってくる。」
「それとこれとは話が違ェ。」
表通りに身体の向きを変えるとしっかりと肩を掴まれる。
もしかして、と私の顔を覗き込む中也は口角の緩みを隠せていなかった。
「ヤキモチか?」
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2023年5月28日 11時