210話 ページ11
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Aとはいつも通りの朝を過ごし、探偵社に送り届けてから本部へと出向いた。
そして、受付の女に声を掛けた。
「時間あるか。」
「え…?あ、はい。」
「面倒だから単刀直入に訊く。俺の事どう思ってる。好きなのか。」
「へ…。」
女は顔を赤くして辺りをキョロキョロと見渡し、顔を俯かせた。
Aは確証は無いと云っていたが、この女の反応を見る限り俺に気があるのは確からしい。
だからと云って、此奴を犯人と断定する訳にもいかねェが…。
「す、好きです…。」
「分かった。諦めろ。手前には興味ねェ。」
「っ…私の事、覚えてませんか!?」
「知らねェな。」
俺は身体の向きを変えて昇降機に乗り込んだ。
少しでも可能性の芽は潰さなきゃならねェ。
これで女が犯人だったなら少しリスクは高くなるが、俺に標的を変えるかもしれない。
動きがなきゃ様子見しかねェが…。
昇降機の中で携帯を開いて一通のメールを打ち込む。
"女と話した。やっぱり俺に気があったみてェだったから振った。もし酷くなるようだったら連絡寄越せ。"
執務室の階層で止まり、扉が開いた瞬間に送信。
「さて、どう出てくる…。」
執務室の前まで来ると芥川、樋口、黒蜥蜴の連中等が立っていた。
「あの、お話とはなんでしょう…。」
樋口に訊かれ、まァ中に入れやと促した。
ソファに全員が腰かけたところで俺は口を開いた。
「俺マフィア辞めるわ。」
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作者名:汎用うさぎ | 作成日時:2023年5月28日 11時