モヤモヤするのは貴方のせいです (ページ8)

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泣きじゃくる目の前の彼女を見て降谷は内心焦った。

やはり、まだあいつの事が好きなのかと。

この現状がそれを明確にし、降谷の胸にはモヤ、そして締め付けられる感覚に陥った。

「何をそんなに泣く事がある。」

嫌われてもいい。

彼女を一時でも悲しみから逃れさせる事が出来るなら。

そう何度も思って、嫌われるような行動を取り続け、そして、いつしか彼女は降谷に対して敬語を使うようになった。

それが降谷にとって、どれだけ辛かった事か。

そして、通り魔に襲われたあの日、敬語が外れた彼女に降谷は舞い上がり、心の中でガッツポーズ。

だが、その時限りのものだった。

「あいつは任務を全うした。」

「分かってるよ！でも、彼が死んだ日、私はただ待つ事しかしてなかった。想いを伝えるためだけにっ！」

ぐさり、降谷の胸に鋭いものが突き刺さる。

知らなかった。

彼女が彼に想いを伝えようとしていた事なんて。

何を言えばいい。
そう思って出した言葉がこれだった。

「好きだ。」

「は？」

優しく、それでいて強く彼女を抱き締め、何度も何度も繰り返し、伝えた。

「お前が好きだ。だから、泣くな。」

恥じらいなんてものは、今の降谷に持ち合わせてはいない。

「伝えるためだけなんて言うな。それがどんなに怖い事か、今の俺には分かる。あいつの事で、泣くのはよせ。俺が耐えられない。」

降谷は警察学校の頃から知っていた。

二人は両思いだった事を。

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