女神と謳われた青年【男主】 (ページ44)

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女神が三十九人ページ44

『────兄さん！あのね、これあげる！』

そう言って僕に笑いかけてくれるのは、一体誰なんだろう。

銀色の髪に、赤い瞳。そして魔道士の様な服を着ている、あの子は誰なんだろう。

大切な、はずなのに思い出せない。

何かを僕は、忘れている。忘れてはいけないナニカを。

「ねぇ、君は……」

────一体、誰なの？

そんな言葉は口から出る事はなくて。僕の視界が真っ暗になったと同時に、また意識を落とした。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

「────何、これ……」

再び意識が戻った時には、見たくない光景が広がっていた。

思わず目を逸らしたくなる光景。色んな人が倒れていて。色んな人が、血を流していて。

その中心に、皆はいた。

でも、皆ボロボロで……メリオダスだって、血を流していて。

こんな時に意識を失っていた僕が、どうしても憎かった。

「目が覚めたようだな。A・ルシファーよ」

そう言って、僕を見てくるヘンドリクセンの姿は魔神になった姿で。とてつもない恐怖が僕を支配した。

「……どういう、つもりな訳？こんな事して、何をするつもりなの？」

キッと睨むけど、そんなのきっと今のヘンドリクセンには通用しないだろうねぇ。だって、痛くも痒くもないって顔してるもん。

震えている腕を隠すように、僕は立つ。
少し離れた所でメリオダス達が目を見開いているのが見えた。

「────貴様は、黙ってこの状況を見ておくがいい。《黒雪》」

その雪は、色んな人の命を奪った。

……なんで、動かないの？なんで、何も出来ないの？僕はただ、ただ……人間達が命を落としていくのを黙って見るしか出来ないの？

ボロボロになった身体で、メリオダスが立ち上がる。

そこで僕はやっと、動くことが出来た。全速力で走り、二人の前に立つ。……守るって決めたんだからねぇ。

きっと、エリーはリズであり、そしてエリザベスなんだ。3000年前に呪いを受けた、エリザベス。

だったらもう、僕がする事は決まっているでしょ？あの日から僕は誓ったんだ。二人を守るって。

「────なんで、お前が一丁前に死のうとしてんだよ」

「え……？」

その声の主に、僕は目を見開いた。
別に、声が聞こえたから驚いているわけじゃない。

ただ、僕の目の前に……僕“達”を守るように、ホークが立っていたから。