【3年A組】ゲッケイジュの花を、君たちに【男主】

参拾 ページ32

＊




「里見くん、本当にやってないの？」

「は、だからやってないって」

「……里見くんは、カッコイイよね。モテてるし、きっと“大体の”女子は、君に言い寄られたらすぐに気分を良くするだろうね。――でも、澪奈は？ 澪奈は、どうだろう」

「……なに、いってんだ？」

＊里見くんを呼び出して、教室の外で思った事を言った。

＊遠回しに、“里見くんが撮ったんじゃないの？”と言った。


＊里見くんは、自信家なところが少しだけあるように感じた。

＊多分、自分の方が上だと思える相手もいる。

＊例えば真壁くん。
＊彼は、他の人からしたら［ただのマネージャー］なのかもしれない。

「……澪奈は、里見くんを降ったんじゃないの？ 水泳の全国大会の数日前に、君を」

「うるさいなぁ、やってないっていってるだろ！」

＊［降ったんじゃないの？］、そんな言葉は、遮られた。

＊叫んで、否定をして、辛そうな顔をして僕に謝って、教室へと戻って行った。

(……あんな否定の仕方じゃ、自分が犯人ですって言っているようなものじゃんか)

＊僕はただ、その背中を見つめることしか出来なかった。


「……れーな」


＊誰にも触れられていないはずなのに、誰にも触れていないはずなのに、優しくて、暖かい――僕の知っている温もりが、手から感じた気がした。

＊その温もりはまるで、僕の言葉に応えるように思えた。

＊ここにいるよと、僕に教えてくれたような気がした。

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