城のゴースト[男主] (ページ4)

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｢ハリー、君は確かクィディッチの選手でしたね？｣

｢沢山食べなきゃ強くなれませんからね、ほらほら｣

｢ハリー、沢山食べたら沢山寝ないとね｣

僕が賢者の石をたまたま手に入れて、気づいたら保健室のベッドの上で。
あの日あの場所で何があったのか、今では鮮明に思い出すことは出来ないけど、目が覚めた時側にいてくれていたのはアーヴィングだった。

アーヴィングは僕の目が覚めてからというもの、沢山あるお見舞い品の中から僕が好きそうなものを選んでは｢食べなさい｣だとか｢栄養がもっと必要ですから｣なんて言って、とにかく栄養を取らせようとした。
アーヴィング曰く、怪我をはやく治すには栄養を沢山取ることと、睡眠が大切らしい。

｢……ハリー、すいません。俺があの鏡の事を教えすぎたせいで、君を危ない目に遭わせてしまいました。｣

｢違うんだ。アーヴィングのせいじゃないよ。僕が勝手に言いつけを破って行動したから｣

｢いえいえ、今回ばかりは俺が悪いんです。本当は君にはあの鏡が何なのか、何のためにあるのか、教えてはいけませんでした。｣

｢好奇心というものは何時になっても消えることが無くて、俺は自分でも驚いています。ごめんなさい。ハリー……｣

アーヴィングはいつもみたいに灰色の身体をゆらゆらさせながら、灰色になっても色が薄いとわかる目を申し訳なさそうにずっと下に向けたまま、自分は好奇心に勝てないどうしようもない馬鹿なんです。と呟いた。

その日、アーヴィングは彼の古い友人の話をしてくれた。それは今でもしっかりと覚えている。

彼の古い友人は、黒い髪がよく映える顔立ちをした美男子だったという。スリザリン生だったので、それらしい考えを持ってはいたが、それにも勝るほどにその友人の知識がアーヴィングを惹き付けたという。
純血主義でとっつきにくい、自分とは合わないような奴だと思っていたが、話してみると案外気さくで面白い。そのうち二人で図書館で遅くまで話し込んだりと、そこそこ仲良くなっていった。だがその彼は、ある時を境に急に変わったのだという。

知りたい、強くなりたいという好奇心が、その友人を変えてしまったのだった。

アーヴィングは深く息を吸い込んだあと、ゆっくりと過去を思い返すように目を閉じ、

｢君にはそうなって欲しくない｣

去っていった。

これもまた、僕の何年経っても忘れられない記憶だ。