26*顕現せよ。 ページ31
「助ける……？」
「うん。
俺、粟田口の部屋じゃなくて屋根裏にいたんだ。あそこにいても霊力が降りかかってきて、傷が治ったんだ。
もしかしたら、刀を直せるくらいの霊力持ってるんじゃないかな……って思ったから……。
ダメならいいよ？無理言ってるって分かってるし……。」
そう言った信濃は、強い決意と重い責任感を一人で抱えてる。
「わかった。助けてみせるよ、信濃の兄弟。」
気付いた時にはもう口から言葉が出ていた。
俺に決意があれば、きっとできる。そう信じてるから。
「ほ、ほんと！？」
「うん。できるかどうか分かんないけど……。それでも良いなら。」
「うん！お、お願いします！」
そう言って袋に入っていた後藤藤四郎の破片を取り出して、刀の形になるように俺の前に置いた。
「これで直せる？後藤は帰ってくる？」
不安そうに俺の顔を覗いてくる信濃。
その顔からは不安が読み取れる。
「大丈夫。」
俺が、後藤も信濃も助けてやるから。
「……わかった。お願い！大将！」
「うん、任せろ。」
敵に折られ、真っ二つになっている後藤藤四郎の破片に霊力と共に俺自身の神力を入れ込む。
《信濃がお前に会いたがってる。きっと吉光や厚、一期も、お前の兄弟も、ここの本丸のやつらはみんな思ってる。
俺はここに新しく来た審神者だ。お前たちを救いたい、そう思ってる。
お前の……後藤の願いも叶えたいんだ。その為に、俺に姿を見せてくれ。
後藤藤四郎、顕現せよ。≫
そう心の中で唱えた瞬間、目の前にある破片は元通りの綺麗な刀身になり、
「後藤藤四郎だ……って、あれ、俺……。」
橙の髪色の短刀が姿を現した。
俺が、その短刀が後藤藤四郎であることを理解するのに時間はかからなかった。
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