クスリ�� ページ7
「……A？」
「うん」
「…A…」
肩が湿る
何度も私の名前を呼ぶ声は、震えて
「A、A、」
「うん」
「俺、ごめ、ごめん。…おれ、」
「うん」
「ちが、おれ、ちがう。おれ、ごめん」
「うん」
顔を上げる
血走っていた目からは、大粒の涙があふれていた
ゆらゆらと揺れる目
不安げな目
迷子みたいな、目
「はなれるな」
「うん」
「…どこにも、いくな。おれ、ちゃんとするから、だから」
「うん」
「こわがらないで」
「怖くないよ」
「まもるから、おれ。ぜったい。だから、A、」
「春千夜、」
そんな風に思っていてくれたのだろうか
そんな風に傷ついていたのだろうか
ねぇ、不器用なのは知ってるけど
言ってくれなきゃ分かんないことのほうが多いんだよ
「ありがとう」
「…っ」
「昔も今もずっと、大事だよ。だいすきだよ」
肩に置かれる頭
私に抱きしめられていた身体は、私を抱きしめていた
強引なんかじゃなくて
壊れものを扱うように、優しく柔らかく、抱き込んでいた
「あとで傷の手当しようね」
「A」
「うん」
「A、」
「なあに」
「…A」
「うん」
子どもみたいに泣く春千夜が泣き疲れて眠ってしまうまで
私たちはずっと、そうしていた。
「Aちゃーん」
「んー」
「竜胆が振られて落ち込んでんだけど」
「…落ち込んでねぇし。振られてねぇ！」
「竜胆くん一緒に夜食食べない？おなか減った」
「食う」
「チョロすぎ」
そのあとは春千夜の傷の手当てをして
竜胆くんと夜食を食べながら、蘭ちゃんの抱き枕と化して
約束通り3人で録画していた金ローをみた。
そのまま寝落ちした覚えはあるのに、起きたら春千夜の隣にいて
「忘れろ」って言われた。ぜったい忘れてやるもんか。
「兄ちゃんさぁ、」
「んー？」
「銃」
「あっは、バレてた？」
「撃つ気だったの」
「Aちゃん傷つけられるよりはさぁ、三途に弾かすめたほうが治癒力的にもよくね？」
「それはそう」
「んで？お前はなんて言われて手ェ離したの」
「…相手が俺でも同じことすると思うって」
「あー」
数日後、号泣していた春千夜の動画を梵天幹部に回された春千夜は
1日中蘭ちゃんと竜胆くんのおもちゃにされていた。
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作者名：san | 作成日時：2021年11月28日 17時
