ヒツジと狼 #tokyo-revengers (ページ7)

今日:1 hit、昨日:12 hit、合計:132,970 hit

ヒツジと狼⑤ ページ7

「レポート進んだ？」

「え、あハイ。竜胆くんのおかげで」

そう、と笑って歩き出す。

竜胆くんのお兄さん、私、竜胆くんという並びは落ち着かなくて
やたらとトートバッグの肩紐を両手で握りしめていた。

「……あ、」

「どした～？」

「…本、借りるの忘れてきちゃいました」

「ん。借りといた」

「え」

右隣の竜胆くんが手渡してくれたそれは、一度没収された本で

「え！え！ありがとううう～…」

「ふは、Aちゃん目ェキラキラしてんのかわい～」

「なんか、意外と気ィ抜けてんのな」

「いつもツンケンしてんの？」

「あんまり誰かと群れたりしてねぇイメージ。凛としてる」

「へえ」

竜胆くんからはそう見えていたのか。
思ってもいなかったタイミングで、自分自身の話をされると言葉に詰まる。

「でも今日だって、講義受けてんのに寝落ちしてた。肘落ちてんのみた」

「…(恥ずかしい)」

「文献探すぞっつってんのに話題の小説に夢中になってたし」

「いーねAちゃん。俺好きよ？Aちゃんみたいな子」

「…？」

その言葉に思考が停止して、竜胆くんのほうを見ると薄ら笑いを浮かべている。

「これからも竜胆と仲良くしてやってな～。竜胆兄ちゃんのLINE、Aちゃんに送っといて～」

「ん。Aケータイ。LINE交換しよ」

突然呼ばれた名前とか
今の展開に脳が追い付かなくて

手のひらにあるケータイの中にある連絡先に、少しドキドキした。

「まだしてなかったのかよ～」

「仕方ねぇだろ。仲良くなったの今日だぞ」

「おっせ～」

「うっせ」

「Aちゃん、」

「ハイ」

目線を合わせてくれる。三つ編みが揺れる。
不思議と、怖いとは思わなかった。

「蘭ちゃんとも仲良くしような～？」

「……お願いします…」

「敬語もやめろ～？竜胆のことは竜胆くんって呼んでんだろ～？」

「はい」

「うん」

「う、ん」

「じゃあ俺は蘭ちゃん、な。呼んでみ？」

「…蘭ちゃん」

「よくできました～♡」

ちゃん、でいいんだ。
確かに二人ともだけど、顔も綺麗だし髪も長くて美人さんだから、ちゃんのほうがしっくりくる。…くる？

満足そうに笑う蘭ちゃんが、私の頭をゆるく撫でた。

「なんかあったらすぐ連絡しろな」

「うん」

「今度3人で遊びいくか～」

「いいね」