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ヒツジと狼㊷ ページ44

「竜胆くんありがとう、あれ持ってきてくれて」

「どういたしまして。…痛くねぇ?」

「平気だよ。しばらくお世話になります」

「飽きるまでここいろよ。兄ちゃんも楽しみにしてたし」

「蘭ちゃん?」

「Aに着せる服、引くほど買ってた」

「え」

「…俺もそのほうがいいし」

「あ、今日竜胆くんのことお嫁さんにしたいって話をね、」

「まだ言ってんのかよ」







それからグダグダと駄弁りながらも
時折苦しそうに傷を撫でる竜胆くんには気付かないふりをしていた。



竜胆くんのせいじゃない
もちろん、蘭ちゃんのせいでもない
春千夜だってそう。








「…竜胆くん」

「ん」

「今日パスタ食べたい」

「どっか探すか」

「竜胆くんのご飯が食べたい」

「ん。買い物付き合えよ」








それからの日々は、あっという間だった。






一緒にご飯を食べて、テレビを見て
竜胆くんおすすめの漫画を読んで影響されて
時々レイトショーの映画を見に行って、あーだこーだ感想を言い合って帰って


同じ匂いのする服を着て

本当に、ずっと一緒にいてくれた。











「蘭ちゃん起きて」

「ん〜…」

「A早くしろ講義遅れる」

「蘭ちゃん起きて!離して!」

「蘭ちゃんと一緒に寝ような〜」

「竜胆くん!!!」

「先靴履いてるから」












事情聴取は、私も何度か受けた。

自分自身が受けていた被害、助けてもらったこと、病院で受けた診断
それらが結果的に、あの日の彼らの行動を「正当防衛」だと認める材料になったおかげで、今もこうして一緒にいることができている。






一緒にいられると分かった日には、嬉しくて
私がまた泣きそうになるのを、二人は呆れたように笑って
病院で抱きしめてくれたときと同じように、挟んで抱きしめてくれた。






でも、







「待って竜胆くん」

「髪はねてんぞ」








春千夜には、やっぱり会うことはなかった。









4年生になって、講義は減って
私は就職活動を終えて、必死に卒業論文と戦う日々



竜胆くんは就職しないみたいで、一緒に卒業論文に打ち込む日々が続いた。











「卒業おめでと〜」

「蘭ちゃん!」










3月

大学を出たところで蘭ちゃんがいつかの言葉通り、花束を片手で持って立っていて
蘭ちゃんのケータイで記念撮影、美味しいご飯を食べさせてくれて

私と竜胆くんは、大学を卒業した。

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作者名:san | 作成日時:2021年9月30日 1時

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