ヒツジと狼㊲ ページ39
さむかったのに、あったかい
さっきまでとは違う、ふわふわする感覚
嫌な気持ちはしなくて、むしろ気持ちいい
あれから、どうしたんだろう
蘭ちゃんが来てくれて
竜胆くんが来てくれて
春千夜が、来てくれて
それで
それで、
蘭ちゃんを待つって言って
竜胆くんが一緒にいてくれて
それで
どうしたっけ
「…オイ」
あいまい
温かい海の中で、夢を見ているような
「……片付いたぞ」
春千夜
真っ暗な世界の中にいるのに
どんな顔をしているのか、まるで手に取るようにわかる
ね、そんなに苦しそうな顔しないで
私うれしかったんだよ
痛かったけど、寒かったけど、どうしようって
たくさんたくさん、思うことはあったけど
一度はもう会えないのかもしれないって思った春千夜が
すぐそこにいて、うれしかった
「…」
コンビニの袋、ありがとうって言わなくちゃ
退院したんだから、餃子も一緒に作りたいし
飛びつきたいのに
今度は私が待たせる側になっちゃった
小指が絡めとられる感覚
それ以上何も言わない春千夜
私にはわかるよ
何年一緒にいたと思ってるの
近所の犬に春千夜だけ吠えられたり
一緒に作ったホットケーキ、真っ黒に焦がしたり
横断歩道は必ず手をつないで渡ったりしてさ
部活で負けて悔しくて
ひとり泣いていたら横に何も言わずいてくれたり
足を捻って動けなくなった時には、おんぶしてくれて
一緒にハマった映画、公開日に見に行ったり
感動してふたり、目を真っ赤にして帰ったり
泣いた泣いてないで喧嘩したり
春千夜ばっかり
お前はそのままでいい、って言葉も
だからわかる
ゆっくりほどける小指
もう、会えないんだ
一緒にも、いられないんだ
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作者名:san | 作成日時:2021年9月30日 1時