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ヒツジと狼㊱ ページ38

Side 竜胆




「もっと飛ばせやノロマ!」

「ギャーギャーうっせぇ!文句いうなら降りて走れクソったれ!」





バイク、拾って跨れば
走っていったと思った三途が飛びついてきやがった



だから本当は嫌だったけど、背に腹はかえられねぇ
仕方なく運転してやってんのに、ビービーギャーギャー騒ぎやがるから

本気で振り落とそうか、6回は考えた。









目的地について、1番初めに目に入ったのは
ただただ感情のない顔で相手を殴って蹴って
血を浴びても動きを止めない兄ちゃんの姿



主犯は兄ちゃんが殴って気絶させたらしい

男も女も関係なし、血の海に兄ちゃんが立っていた







「アイツどこ行った…」







三途の声にハッとしてAを探す
兄ちゃんのずっと後ろ、今にも倒れそうな姿のAを見つけた








「A」







兄ちゃんに言われたんだろう
頭から被ったジャケットの下で目を閉じて、両手で耳をふさぐA




今にも倒れそうなその身体は
傷とアザだらけ、頬も腫れて唇には血がにじんで
ビリビリの服から嫌でも想像してしまう、何をするつもりだったのか






思わず眉をひそめた









「…竜胆くん」









ぶっ殺したい
ぶっ殺す



相手が何人いようが関係ねぇ








「へーき、」








へらり、と笑う顔

三途と会えて、嬉しそうで
三途はAの姿を見て、苦しそうで




俺は良い奴じゃねぇから、
Aを泣かせた分苦しめクソ野郎、なんて三途に対して思う










「A、身体辛ぇだろ。寄り掛かっていいから」

「ん…」








三途と兄ちゃんが暴れてるのを眺めて
本当なら俺もこの手で、自分の手で殴り殺したい







でも、こんな状態のA放っておけるわけねぇ



きっと俺のそれをくみ取った兄ちゃんが、どうしたいか聞いてくれた







「A」






触れる

熱い身体
やっぱり熱、ぶり返してんな…



うまく力の入らない、ボロボロのAを抱えて、








「病院、一緒に行こうな」

「…蘭ちゃん、」

「ん?」

「待ってろ、って」

「…待つ?」

「ん…」








本当なら、今すぐにでも病院行って治療受けて
傷一つ残らねぇようにしたいし
兄ちゃんも同じだろうから、先に病院行ったってなにも言わねぇだろうけど



Aが望むなら、って思う






…俺、甘ぇな。十分自覚してはいたけど。








大事に、大切に、壊れねぇように
そっと俺にその身体を寄り掛からせた。

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作者名:san | 作成日時:2021年9月30日 1時

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