検索窓
今日:8 hit、昨日:16 hit、合計:132,965 hit

ヒツジと狼㉟ ページ37

「ら、ちゃ…」

「…」






倒れて身動きの取れない私の頭側
蘭ちゃんがしゃがんで見下ろす、私の頬をそっと撫でる



蘭ちゃんがあまりにも無言だから、少し怖気づいてしまう




感情が、読めない








「Aちゃん」

「…」

「後は俺らに任せろな」








優しく身体を起こされる

手を縛られていた縄をほどいて








「ちょっとの間、目ェ閉じて耳塞いで待ってろ〜?」

「…うん」

「ん。いい子♡」






蘭ちゃんが着ていたジャケットを頭から被せられて
私の頭をゆるく撫でたあと、いつもの笑顔で笑って


私が目を閉じて耳をふさいだのを確認して、手が離れた









どれくらい、そうしていただろう








寒いし痛いし、意識がイマイチはっきりしなくて
横になったほうが、楽な気がして


なんで私でさえも分からない場所なのに、来てくれたんだろう


俺ら、って言ってたよね
竜胆くんも来てくれるのかな、私ボロボロなのにな
こんな姿見せるの、情けないや

竜胆くんの前では泣いてばかりだったから、今更だって笑われるかな








ずるりと身体が傾く
どうしよう、身体が言うこと聞かない








「A」







耳をふさいでいた手を、ゆるく握られる
また頬に触れる手

今度は傾いた身体を支えられて





ゆっくり、目をあける








「…竜胆くん」

「…痛かったな。怖かったよな」

「…へーき」







「…オイ」








春千夜だ
春千夜の声
足音


頭がふわふわするのに、はっきりわかる








目の前、私の頭を鷲掴みにして目を合わせて








「…アイツらか?」

「…どこ行ってたの」








苦しそうな顔







「…俺以外にやられてんじゃねぇ」

「…うん、あいたかった」

「くたばったら殺すからな」

「へーき、」







こんな状況なのに、会えたことが嬉しくて
声、聴けたことがうれしくて

ありがとう、って言いたかったのに
春千夜はじっと私の顔を見つめたあと、立ち上がって背を向けていってしまった






「なんだ〜?人の弟と仲良くバイク2ケツか〜?」

「うるせぇ走るより早ぇだろ」

「可愛い弟の頼みで仕方なく主犯残してやったのにな〜自分で殺っちまおうかな〜」

「引っ込んでろ俺がぶっ殺す」

「Aちゃん泣かしてんじゃねぇぞ」

「…」

「りんどー、お前どうする?」

「手ェ離したらこいつ倒れるから兄ちゃんに譲るわ」

「ラッキーこいつらどうしたい?」

「決まってんだろ」

「おっけ〜」

ヒツジと狼㊱→←ヒツジと狼㉞



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (330 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
389人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:san | 作成日時:2021年9月30日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。