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ヒツジと狼㉝ ページ35

Side 竜胆




「兄ちゃん」

「ビンゴだな」





通話を終えた兄ちゃんと目が合う
冷たい目、抗争のときとは違うその温度を感じる






時刻は22時
Aのバイトが終わる少し前を見計らって迎えにきた

でも、一向に現れる気配がなくて




竜胆くんAどこ?




送ったLINEにも既読がつかなくて電話も出ない
感じた嫌な空気、それは兄ちゃんも同じだったみたいで
顔の広さを有効活用して片っ端から情報を集めた







「兄ちゃん先行ってて」

「全員殺していーの?」

「主犯格だけ置いてて、他は好きにしていいから」

「いいとこ取りかよ〜」

「ちげぇし。ってか兄ちゃんに言われたくねぇ!」

「ハイハイ、早く来いよ〜」

「ん。兄ちゃん警棒は?」

「今持ってねぇしいらね。使う価値もねぇやつらだろ」

「…そうだな」








兄ちゃんと背中合わせ、反対方向に俺は進む
頼んでおいたバイク、ここまで持ってきてくれたやつと交替でまたがって





もっと早くこうしておけばよかった
そう、思うけれど手掛かりが少なすぎた







間に合え
間に合え






手に力が入る
変な汗が背中を流れる
Aん家の近くまできたから、適当にバイクを乗り捨てて





走る
いつぶりだ?走んのなんか






息が上がる







きっと、同じ気持ちだから
優しさなんて良いもんじゃねぇけど
気持ちは、わかるから








「三途」









Aん家の近く
集めた情報の中には、こいつの居場所も含めていた









「…んの用だよ」









俺よりもずっとずっと前からAと一緒にいて
俺よりもずっとずっと、たくさんの表情を知っていて
たくさん、名前を呼んで呼ばれて



想像したらすっげぇムカつく

ムカつくけど、羨ましいとも思う




…でもやっぱムカつく












「Aと連絡が取れねぇ」

「あ?」

「襲われた」

「…ふざけてんのか」

「そう思いたいならそう思えよ。いま兄ちゃんが向かってるけど状況までは分かってねぇ」

「ふざけてんのかって聞いてんだよ!」









瞬間、掴まれる胸倉








「んでお前らがいんのにこんなことになんだよ」

「…」

「…ックソ」

「聞くの聞かねぇの、場所」

「さっさと言えやぶっ殺すぞ」








殺気



集めた情報から割り出した場所を口にすれば、さっさと走っていきやがった
俺も乗り捨てたバイクを目指して、足を進める






…一発ぶん殴ればよかった。

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作者名:san | 作成日時:2021年9月30日 1時

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