ヒツジと狼 #tokyo-revengers (ページ34)

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ヒツジと狼㉜ページ34

あいたいな、って
そう、思うことばかりで

ケータイでかけていたアラームが鳴って
ベッドサイドに置いていた体温計に手を伸ばす

薬のおかげか、ずいぶん楽になった身体
体温計に示された数字はギリギリ平熱、いまのうちに写真撮って送ってしまおう

A写真を送信しました
Aなおった
竜胆くん無理すんなよ
竜胆くん帰り兄ちゃんと迎えいく
蘭ちゃん大人しくまっとけな～

バイト行くこと、言ったっけ？
それとも前に竜胆くんにシフト伝えたのか？まあいいや

楽な服装に着替えて、最低限のメイクだけして
簡単に髪を整えて家を出る。

嘘だ、って思った
気のせいだ、って

ドアノブに引っ掛けられたビニール袋

中、たくさん入ってるから
いびつになったその袋をあわてて手に取って

A竜胆くんか蘭ちゃん?たくさん買ってきてくれたの
蘭ちゃん俺らまだそっち行けてねぇから違うな
竜胆くんちがう

そしたら、
そんなの一人しかいない。

二人とも気に入っていたチョコレートのお菓子
プリンにゼリー、インスタントのお粥とスープにカットフルーツ
スポーツドリンク、温かいミルクティーは冷めていた
解熱剤にカイロがたくさん

あわてて電話をかけてみる

コール音
1回なって、2回なって、3回なって

やっぱり、つながる気配もなくて
行き場のない気持ちで胸がいっぱいになる

ずるい
あいたかった

嫌いになったのかなって
こんなに長い喧嘩、初めてだったから

もう、一緒にいたくないのかなって
そう、思っていたから
それがつらかったから

「…」

一度だけ、その袋を抱きしめた
時間は待ってくれないから、もう行かなきゃ

玄関に袋を置いて、鍵を閉めた