ヒツジと狼 #tokyo-revengers (ページ4)

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ヒツジと狼② ページ4

どうして高校では50分授業なのに、大学になると90分になるのか。

90分も集中して聞いていられる人なんて存在するのだろうか
そんなことを考えるくらいには、集中力は続くないし瞼も重くなる。

春千夜どこ

マナーモードにしていたケータイが震えた

今日はやけに早い到着みたいだ。

春千夜は大学にはいっていないけれど、こうしてたびたび私がいる日に忍び込んでくる。

Aまだ授業中。12時におわる

すぐに既読がついて、そのあとは返信がなかった。

「灰谷くんごめん、シャーペン図書館行くまで借りてていい？」

「おー、どっか行くの」

「ごめんねありがと！ちょっと用事！また次の講義でね！」

「ん」

チャイムが鳴ったと同時に手早く片付けてトートバッグを肩にかける。

教室を出て左に曲がる
階段を使うほうが早いので、駆け足で降りて
螺旋階段の踊り場も駆けて
また階段をリズムよく

「！」

脚がもつれ、

「階段走んな」

「…」

「返事」

「…ハイ」

ダボっとしたグレーのトレーナーを着た春千夜の腕に、私の身体は受け止められる

「頭パックリ割って救急車呼んだこと忘れてねぇよなぁ？」

「何歳の話してんの…」

「言われたくなきゃ走んなよ、次は助けねぇ」

その言葉は聞き飽きたくらい、春千夜がくれていた言葉だ。
そしてくれた数と同じ数、私は春千夜に助けられている。

「…今日も一緒だったわけ」

「ん？」

「灰谷」

「うん。春千夜は苦手？灰谷くんのこと」

「ま、敵だしな。抗争になったらぶちのめす」

「ぶちのめす」

「お前はそんな言葉使うんじゃねぇよ！」

「うるさ何なの」

校舎裏の、小さなスペース

茂みに腰かけて春千夜の頬を撫でる

「…昨日は集会って言ってなかった？」

「…事情が変わったんだよ」

「暴走族にもいろいろあるんだね」

擦り傷、かすり傷
それだけで済んでいるのは、きっと彼が喧嘩に強いからだ。

痛い？
痛くねぇ

そんなやり取りも、もう飽きるほどしたなあ。

黙って目を閉じて私に傷を撫でられていた春千夜の頭が

ぽすん、と肩にのっかる

そのままずるり、と私の足を枕にしてしまう

「髪、伸びたね」

「ん」

「春千夜、」

「ん」

「おやすみ」

「…ん」