ヒツジと狼㉘ ページ30
お買い物をして、お家について
食材をキッチンに置いた竜胆くんがいったん部屋を出る
私は手を洗って、手伝う準備は万端。
「あれ、竜胆赤くなってね?」
「あー…」
「さっきのコーヒー?あの女殺す?」
「いーよ面倒だし」
「Aちゃーん」
リビングの外から聞こえる声に呼ばれて、声のする方向へ足を運ぶ
洗面所
コーヒーのシミがついてしまったパーカーを脱いだ竜胆くんの背中
そこは明らかに赤くなっていて、火傷だと一目見て分かった
それと同時に、彼の身体に刻まれた刺青に目を奪われて
「竜胆の手当てしてやってくんね〜?」
「…」
「Aちゃん?…なんか竜胆の裸に見とれてるっぽいんだけど」
「そんな見んなよ」
「蘭ちゃんも脱ぐか〜?」
「すごい」
「え?」
「…これ、刺青?」
「あー、うん。怖い?」
「ううん。…半分は蘭ちゃん?」
「そ。俺のも見る?」
「大丈夫」
「Aちゃんデコピンの刑でーす」
「いっった!!」
「アホ面〜」
前と後ろそれぞれに竜胆くんの身体に刻まれた刺青
真っ二つに分かれたそれは、蘭ちゃんが持っているという
言葉通りの「二人でひとつ」
同じ魂を綺麗に半分、分け合ったみたいな
「冷やすもの借りていい?」
「Aちゃんの目ェ冷やしたやつならあんぞォ」
「…」
「ん〜?」
「…竜胆くん」
「慣れろ」
それからは竜胆くんの背中を冷やしつつ、ご飯をつくることに
やらせてください、って懇願したのに竜胆くんに却下されたので、
「Aちゃん知ってる?」
「ん?」
私はまた、蘭ちゃんとソファに座って抱き枕になっている。
「金木犀」
「うん」
「あれ、自分らじゃ繁殖できねぇんだって」
「?どうするの」
「あの匂いが好きな人間、どれくらいいると思う?」
「たくさん」
「そ、たっくさんいんの。だからね、人間が繁殖させたんだって」
「へえ、なんか金木犀からしたらしてやったりだね」
「まぁな〜。でもさぁ、」
「うん」
「金木犀が増えることを望んでなかったらどうだろうな?」
分からなくて、首をかしげる
そもそもなんでこんな話になったんだろう
「増えた途端みんな同じになんの、つまんなくね?唯一無二の存在だったものがさ」
「…たしかに」
「Aちゃんだったらどうする?」
「んー、枯れるのを待つ。蘭ちゃんは?」
「つまんねぇから死ぬ」
「潔いね」
「だろ〜♡」
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作者名:san | 作成日時:2021年9月30日 1時