検索窓
今日:4 hit、昨日:16 hit、合計:132,961 hit

ヒツジと狼㉔ ページ26

「春千夜!」

「うっせぇ!」

「元気そうでよかった」

「誰だと思ってんだよ」

「あのね、」

「お前本当俺の話聞かねぇな」




次の日
春千夜の入院する病院を訪れて、ベッドサイドの椅子に腰かけようとしたところを
手を引かれてベッドの上、春千夜のすぐ隣に腰かける形になる。





「大事だよ」

「あ?」

「春千夜のこと、今までもそうだったけど。春千夜がそうしてくれてるみたいにさ」

「…」

「私も春千夜のこと、大事なんだよ」

「…そうかよ」

「うん」

「なんだよ急に」

「思ったから言いたかった」

「てかなんだよその顔」

「んー?」

「ぶっさいくになってんぞ」

「うるさいな〜」





自分で冷やしてみたけれど、間に合わなかった。
メイクでもごまかせなかったし、竜胆くんに怒られるかもしれない。



飲む?て渡したオレンジジュース
紙パックにストローをさして、それを飲む春千夜を見つめる






「今日はバイトだから、夜来れないや」

「おー、しっかり働け」

「帰ったら電話してもいい?」

「起きてたらな」







そんなこと言うけれど、そういうときはいつも
私が電話するまで起きていてくれていることを知っている。



愛おしくて
思わず春千夜の顔をみて笑ってしまった








「しばくぞ」

「今度お守り買ってくる。もうこんな怪我しませんようにって」

「自分の分も買えよ。お前どんくせぇんだから」

「失礼だな。じゃあ私行くからね?」

「…オイ」







立ちあがろうとしたとき
また、手を引かれて
春千夜の隣に逆戻り

肩に、春千夜の頭がのる







「…30秒」

「…うん」

「…事故んなよ」

「どの口が言ってんの」

「…泣くくれぇなら連絡しろ」

「春千夜病院抜けだすからだめ」

「それの何がだめなんだよ」

「普通にだめだよバカ」

「ぶっ飛ばすぞ」








本当に30秒だったとおもう
ゆっくり、肩から重みが消えて
代わりに、おでこに唇が一瞬当たった


小さいころ、一緒にみたドラマで覚えたそれは
当時の私たちにとってお守りみたいなもので
春千夜がそれを覚えていたことが、意外ででも嬉しくて

私は笑う








「じゃあ行ってきます」

「ん」







病室を出て、一瞬あたりを見回したけれど
昨日、目があった人はいなかった。

ヒツジと狼㉕→←ヒツジと狼㉓



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (330 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
389人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:san | 作成日時:2021年9月30日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。