ヒツジと狼 #tokyo-revengers (ページ21)

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ヒツジと狼⑲ ページ21

エレベーターの中で深呼吸をする
心臓、いたい

何がこんなに怖いんだろう
知らない人と目が合っただけなのに

まるで初めから私を見ていたみたいな、目の合い方

自意識過剰？

「…」

エレベーターが1階について、ドアが開く

ロビーには人がたくさんいて
蘭ちゃんも竜胆くんもすぐに見つけられなくて

私はまた、少しドキドキする。

「A」

「っ！」

「悪ぃ、そんなびっくりすると思わなくて」

「…竜胆くん」

「会えた？」

「…うん。ありがとう荷物、ごめんね」

「気にすんな。兄ちゃんそこのカフェにいるからいこ」

「うん」

ごめん春千夜
餃子、渡せそうにないや。

今日はなんとなく、春千夜のいる病棟に戻るのが怖い。

「兄ちゃん」

「おー。行くかぁ」

「？どこに？」

「家。お前その目マジでちゃんと冷えるまで帰さねぇから」

「え」

「腹も減ってんだろ。一緒に飯食おうぜ」

「竜胆くんが作ってくれるの？」

「おー」

「嫁だ」

「お前の嫁になったつもりはねぇっつの」

行きと同様、私はまた蘭ちゃんの後ろに乗る

「Aちゃんこれ持ってろな～」

「うん？」

「さっきのカフェのケーキ。Aちゃんも竜胆も好きそうだったから買っちまった」

「え！ケーキ…！」

「ふは、蘭ちゃんにつかまりながらそれ大事に持っとける？」

「うん」

「いい子♡すぐ着くからな～」

蘭ちゃんと私の間にケーキの箱を置いて
それを挟むように両手を蘭ちゃんに伸ばす。

…ちょっと怖いな。

動き出すバイク

病院が見えなくなるまで首をひねって見送れば、後ろでバイクを走らせていた竜胆くんに
「ちゃんと兄ちゃんにつかまってろ」ってまあまあ大きい声で怒られてしまった。

ごめんなさい。

「りんどー腹減ったぁ」

「ガパオでいい？」

「んー」

「竜胆くん、手伝うことある？」

「Aちゃんはこっちな～」

「兄ちゃんの相手頼むわ。すぐできっから寝んなよ」

「うん」

灰谷家について、私はリビングの大きなソファの上で
はじめてここへ来たときのように、蘭ちゃんと二人。

ケーキはすぐに冷蔵庫に入れて、中身は見てないけどたぶん無事。たぶん。

「Aちゃん体温低いよなぁ」

「そうかな？」

「ん～」

何を思ったのか、ふわふわのタオルケットで包まれて
これまたはじめてここへ来た時のように、抱き枕にされた。