ヒツジと狼 #tokyo-revengers (ページ3)

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ヒツジと狼① ページ3

「灰谷くん」

「ん？おはよ」

「おはよう。灰谷くん、」

「なんだよ(笑)」

「灰谷くんも暴走族なの？」

「そんな言葉知ってんの？」

「テレビで見たことある。春千夜もそうだし」

「そ。暴走族」

「ふーん、そっかあ」

「んだよ、そんだけ？」

昨日の夜は、時間も遅かったし春千夜のリクエストでオムライスにして
一緒に食べたあと、すぐに集会とやらに行ってしまう春千夜を見送った。

そして今朝、一番後ろの端っこの席に座る灰谷くんを見つけて
ひとつ席を空けて隣に座ると、昨日みた灰谷くんは幻だったのか

そう、思うほど彼は「大学生」だった。

「あいつとどういう関係？」

「あいつ？」

「三途」

「小さいころからの幼馴染」

「タイプ真逆じゃね？」

「そうかな、意外と似てるって言われることもあるよ」

「お前何隠し持ってんの」

「実は喧嘩強かったりして？」

「それはない」

「なんでさ」

「そんな綺麗な手してるやつが人殴ったことあるわけねぇだろ」

そういえば、春千夜の手はゴツゴツしていた。

綺麗な顔をしているけれど、それ以外が男の人だった。

言葉遣いも
後ろ姿も
歩き方も
声も

見慣れすぎてしまって、気にしたこともなかったな。

「今日も喧嘩するの？」

「分かんね、兄貴の気分次第」

「へえ」

「そういや参考文献見つかった？」

「………ウン」

「何いまの溜め、ぜってぇ見つかってねぇじゃん(笑)」

「おもしろそうな本いっぱい入ってたから…灰谷くんは？」

「俺もまだ。一緒に探す？」

「え？」

「手分けしたほうが早くね？嫌だったら別にいいけど」

「嫌じゃないです」

「ん。今日何限まで？」

「4まで」

「じゃあそのあと図書館集合な」

思わぬ距離の縮まり方に戸惑いつつも、彼が成績優秀なのは知っているので
正直「ラッキー！」なんて思ってしまった。ごめんね灰谷くん。

教授が話し始めたのでノートを開いてペンケースを

「…」

昨日図書館に忘れたんだった

忘れたことを忘れていた

「ん」

左隣から手渡されたシルバーのシンプルなシャーペン

「…ありがとう、助かる…」

「貸し1な」

そう言っていたずらっ子のように笑った灰谷くんに、思わず笑みがこぼれた。