ヒツジと狼 #tokyo-revengers (ページ18)

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ヒツジと狼⑯ ページ18

「A、」

「…っ」

「俺と一緒に息、しような。ゆっくりでいいから」

いたい
いたい
くるしい
なんで？

身体の中の何かが壊れたみたいに、涙がボロボロあふれて
竜胆くんが指先でそれをぬぐってくれる。

「く、るし…っ」

「うん。吸って」

「～っ…」

「上手。吐いて」

「は、ぁっ…」

ぬぐってもぬぐっても止まらない涙
握っても触れても止まらない震え

ねえ、なんで。どうしようこんなにこわい。

「行く？それとも行きたくない？三途のとこ」

「…」

「Aが決めな？行くならそこで兄ちゃんが待ってるから。俺も後ですぐ向かう。行きたくねぇなら俺と一緒に戻る。どうする？」

「いく、いくけど、」

「うん」

「こわい」

「うん」

「……いく」

「ん。俺も兄ちゃんもいるからな」

ポンポンと頭を撫でて、するりと手を取って歩く竜胆くんについていく

そこにははじめて会ったときと同じように、蘭ちゃんが立っていて
ゆらりと私に近づいて笑う。

「Aちゃん、ひっでぇ顔～」

そのまま頬を片手で掴まれて、私の口はタコのようになって
またじわりと滲んだ涙を、すかさず拭ったのは竜胆くん。

「明日目ェ腫れるから、あとでちゃんと冷やそうなあ？」

「うん…」

「じゃ、行ってくるわ」

「ん。A、あとでな」

ヘルメットをかぶせられて、蘭ちゃんがまたぐバイクの後ろに乗せられる。

「Aちゃん、ちゃーんと蘭ちゃんにつかまっとけよ～」

その言葉を聞いて、蘭ちゃんの腰に回した腕に力を込める。
いい子、って蘭ちゃんの声が聞こえて私はもう一度、深呼吸をした。

春千夜のバイクに乗せてもらったときも、春千夜はヘルメットをつけなくて
私にそれをかぶせて、ちゃんと掴まんねぇと振り落とすぞ、って脅されて

そうだ、海
冬の海を朝早く見に行って

寒すぎて、二人風邪を引いて

それで、

「Aちゃん、」

「ん…」

「蘭ちゃんさみぃからもっとギュってしてくんね？」

「…こう？」

「もっと」

距離を詰めて、力を込めて
蘭ちゃんの体温に気付いて、ようやく冷たかったのは自分自身だったことに気付く。

「あは、役得～♡」

「え」

「そんまま手ェ離すなよ～」

また、バイクの速度が上がった。