1 ページ1
.
ソウルの街の一角にある古びた建物。
1回通っただけでは誰も気がつかない、知る人ぞ知る隠れ家のような喫茶店。
私は祖父から譲り受けたこのコーヒーショップ、いや純喫茶の方が正しいだろう。お客様方にくつろいでいただける場所になるようにと日々仕事に励んでいる。
今日もいつも通り朝5時にはお店に来て、仕込みを始める。仕込みと言っても、モーニングを食べに来るのは毎回同じの人たちばかりで、大した量は必要ではない。
祖父から譲り受けた店だからだろうか、お客様は皆年配の方が多い。中には杖をつきながらヨロヨロしながら通ってくださる方もいる。
皆さんいい人ばかりでAちゃん、Aちゃんと呼んでは可愛がってくれる。
それもそうだ、私は幼少期の頃からこの喫茶店に出入りしており、中学になってからは体の弱かった祖父の手伝いとして、カウンターに立っていた。
そんな事を考えていたらもうじきオープンの時間。
わたしは真っ白のシャツに黒のベスト、赤いネクタイに黒いズボン。最後にソムリエエプロンを巻ききつく腰で結ぶ。
一種の儀式のようなものだ、エプロンをきつく結ぶとき、やる気と気合いを込めて「よしっ」そう自分に声をかけるようにしている。
今日もいつも通りのルーティンをこなして、6時になるとドアに掛かっている小さな“閉店中”というプレートを“開店中”へとひっくり返す。
しばらくすると、いつも通りの面々が店へと入ってきてモーニングセットを頼み出す。
「Aちゃん、おはよう！今日のモーニングも美味しいよ。何よりもコーヒーが旨いねぇ。」
お客様がいつものようにこうして褒めてくださる。
コーヒーには並々ならぬこだわりがある。豆の買い付けから自分で行い、常に5種類のコーヒーを用意するようにしている。これは全て祖父から教わったことだ。
コーヒーを入れる際「手を抜くな」そう何度も言われてきた。一杯一杯丁寧に真心を込めて、提供するようにしている。
いつものようにお客様と団らんしている時だった、入口のドアが開く音がした。
「いらっしゃいませ」
脊髄反射でそう声をかけると恐る恐る扉が開き、どうやら外から中を伺っているようだ。
店の玄関まで迎えに行くと、そこにはマスクにネイビーのキャップを被った男性が立っていた。
「いらっしゃいませ、中へどうぞ」と少し開いたドアを開けながら迎え入れると、促されるように、中へと足を進める彼。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 579人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ボッチャ(プロフ) - 千笑さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると嬉しいです♪頑張って更新しますね！ (2021年8月24日 23時) (
レス) id: be042a805d (このIDを非表示/違反報告)
千笑 - すごく面白いです!本人の顔を見ているわけでもないのに簡単に想像できてしまって、終始口角が上がりっぱなしでした（笑）更新頑張ってください！！ (2021年8月24日 9時) (レス) id: 14dbb1d17f (このIDを非表示/違反報告)
ボッチャ(プロフ) - anzuさん» コメントありがとうございます。読んだ瞬間嬉しくて笑顔になりました。なんとか完走できるよう頑張りますので引き続き読んでくださると幸いです。 (2020年8月21日 4時) (レス) id: be042a805d (このIDを非表示/違反報告)
anzu(プロフ) - お話めちゃくちゃ好きです> <更新されるたびに嬉しくて飛びついて読んでます！笑 無理せずボッチャさんのペースで頑張ってください、素敵なお話をありがとうございます。 (2020年8月20日 0時) (レス) id: 2d5dcafa21 (このIDを非表示/違反報告)
ボッチャ(プロフ) - 〇〇さん» ありがとうございます。頑張って書きます！ (2020年8月18日 1時) (レス) id: be042a805d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ボッチャ | 作成日時：2020年7月30日 5時
