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ロミオと別れた私はロミオをさけるようになった。見ると未練が湧くから。
最前線とも言えるような場所だった極東も、聖域のおかげで幾分アラガミの襲来は落ち着いていて、最近は復興作業に力を入れている。今まで手の届かなかった壁の外の住民を守れるように、防衛線を広げた。彼らを守るために、もうロミオのようなゴッドイーターが戦う必要のないように。犠牲を出さないために。
現在第一部隊は広がった防衛線のテントへ支給品を運び込む仕事をしていた。周りにはそれを手伝う住民や、他の部隊から手伝いを志願したゴッドイーター達もいた。
「コウタさん、食糧持ってきました」
「お疲れ、A!息抜きにガム食べる?」
「いえ…」
「あ、ロミオとリヴィじゃん」
食糧の詰まった箱を倉庫に運んでいると、視線の先にロミオとリヴィの姿が見えて、ビクリと肩が跳ねる。第一部隊はブラッド隊とかなり親密だったために、こちらの仕事を手伝うことも多い。けれど、こんなタイミングで、彼らと一緒だなんて。
「A、大丈夫か?顔色悪いけど…」
コウタの声が遠い。重い頭をあげるとロミオとリヴィが手を繋いでいるのが見えて、私は膝をついてその場に吐いてしまった。じわりと涙が滲む。精一杯の力で飲んだ水が胃液と混じって地面に吐き出されていき、体の中からなくなっていく。
「Aっ、A!おい、誰か!救護班呼んで!」
コウタが周りに居た人に呼びかける。私を支えているコウタの服が一緒に汚れてしまったのに気付いて私は呼吸を整えて言葉を発する。
「すみ、ませ…汚れ…」
「気にしなくていいから!つーか、最後に飯食ったのいつだ?!」
「…みっか、まえ」
背中をさすられながら聞かれて私は途切れ途切れに答える。複数の足音が聞こえてくるが、コウタの「このバカ!」という言葉を最後に、私の意識は沈んでいった。
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作成日時:2021年11月28日 0時