飴と狼くん。【馬狼照英】

◆飴7個目 ページ8

それからしばらく経った頃。校内は体育祭に向けて盛り上がっていて、皆がソワソワしながら準備に追われている。


うちのクラスも例に漏れず、放課後に競技決めという地獄が始まった。

一人一競技は必ず出なければならない決まりなので、男女合わせて20人近くの人数がいるあたし達のクラスでは結構な時間がかかるのだ。

騎馬戦やリレーなど、定番の種目に加えて、障害物競走や借り物競争、そして何故か二人三脚。


「A、何にするのー？」

「んー…彩華と一緒の借り物…と思ってたけど埋まっちゃったし…」


飴を舐めながら「リレーだけは無理。」と前の席の彩華に愚痴ると、「確かに〜」と言って苦笑いされた。


「つーかあたし保健係がいい。最後まで余ったら保健係なれんじゃん。そうするわ」

「ええええ、Aの勇姿見たいよぉ！！」
「うるさいうるさい」

そう、最後まで競技が決まらなかった3人は保健係になれるのだ。
という訳で、皆が決まるまであたしは挙手しないことに決めた。


「……じゃあ最後、リレーのメンバー決めたら終わりだからなー。まだ競技決まってない奴こっち来いー」

先生が名簿を持って教卓の前に立つ。

一人一人、順番に名前を呼ばれていく中、不意に馬狼の名前が呼ばれた。

「馬狼！お前はリレー強制参加だぞ」
「仕方ねぇな」

馬狼強制参加なんだ。サッカー部だからか。

それを皮切りに残っていたメンバーの内、リレーへの参加目的だった何人かが手を挙げていく。
残った何人かはあたしと同じく保健係を狙ってるんだと思う。


「おい、あと一人だぞ！誰か立候補ー！」


お前やれよ、いやいやお前が、といった空気の中、あたしは一人迷いまくっていた。

(どうしよう、馬狼が出るなら…走るの嫌いじゃないし…)


ても。ギャルがリレーに出るなんて恥ずかしすぎるでしょ。
頭の中で葛藤を繰り広げていると、不意に馬狼と目が合った。

「…お前出ろよ。こっちはさっさと決めて部活行きてぇんだ。」


「…………は？」

何を言われたのか一瞬理解できなかった。

馬狼はあたしに一緒にリレーに出て欲しい…ってコト？！


…かなりフィルターがかかっている気もするが、馬狼と一緒に走りたい気持ちの方が勝った。

◆飴8個目→←◆飴6個目

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す