飴と狼くん。【馬狼照英】

◆おまけ2 ページ49

…夜。今日もあたしはソワソワしながら、通話のボタンをタップする。



「……もしもーし、照英？」

『…もしもし。』


スマホのスピーカー越しに聞こえる大好きな人の声に、あたしの顔はついニヤけてしまう。

このままだと指摘されるので、バレないようにまともな表情を作ってからビデオ通話に切り替えると、画面に映るのはベッドに腰掛けた彼氏の姿。


もう何回か見た光景だけど、相変わらず監獄って感じの部屋でちょっと心配になる。


『フン…お前も毎日飽きねぇなほんと。そんなに俺が恋しいのかよ。』

「え、恋しいに決まってるじゃん……日中なんか飴食べるの止まんないもん。あたしめっちゃ寂しがり屋なんだからね？」

『……。……浮気…とか、すんなよ。絶対。』


…浮気！？ 彼がそんな心配をしてくれるとは思っていなかった為、ちょっと嬉しくなってしまう。

いくら寂しくても他の男に靡いたりなんてしないが、離れていれば不安になるのは当然か。


…なんなら、こちらも同じような事を思っているくらいだし。


「浮気とかしないから！てか…照英こそ今日の配信で絶対人気出るじゃん…ハットトリックやばかったもん」


照英が人気者になるのは嬉しい事なんだけど、女の子にモテモテになったらちょっと嫌かもしれない。


『別に下民共に何思われようがどうでもいいっつの。…まぁ…お前からの褒め言葉なら聞いてやらんこともないけどな。』


照れたのか、顔を背けながら言う照英。ちゃんとあたしを特別に想ってくれているのだと分かり、嬉しさで折角引き締めた表情筋が緩んでいく。


「んん……何それズルい。…今日の照英カッコよかったよ、世界一。」

『……おう。』


素直に褒めれば、満足そうな顔で短く返事をされる。あたしの言葉で喜んでくれるのが何よりも嬉しかった。


「…次会えるのいつだろうね、早く会いたいなぁ……」


そう言いながら画面に指先を触れさせてみる。

配信やビデオ通話で彼の姿を見る事は出来るけれど、やっぱり手を繋いだり、ハグしたり、キスをしたり……直接触れ合えないのはとても辛い。



『…待たせて悪い。』

「……え」


画面の向こう側で、照英も手を伸ばしたのが見えた。

そのままあたしの手とくっついて、まるで本当に手を繋いでいるみたいだと思った瞬間。



『好きだ、A』


滅多に聞けないストレートな愛の告白に、心臓が大きく跳ね上がった。

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