飴と狼くん。【馬狼照英】

◆飴41個目 ページ42

…大きく深呼吸をして、口を開く。


心臓が痛いくらいにバクバク鳴っている。


きゅ、と馬狼の手を握り直す。


……大好き、馬狼。








「馬狼が好き。大好き。二年前からずっと好きだった。」



……言った…。

遂に、言ってしまった。


震える手とは裏腹に、長い間抱えてきた想いを吐き出す事が出来て妙にスッキリした気分だ。





「……。」


訪れる沈黙。人気のないこの道では、自分の心音が聞こえてしまいそうな程の静けさだった。


返事を待つ間、ただひたすらに足元を見つめ続ける。

馬狼があたしの言葉を聞いてから一言も喋らないので、やっぱりダメかなぁ、なんて思いながら。

振られる覚悟はしていたけれど、いざその時が来るとやっぱり悲しいものだ。



「………あのさ、ダメなら…」


握ったままだった手を離して、一歩下がろうと試みたがそれは叶わなかった。







「………ぇ…？」



…あたしの身体は強い力に引き寄せられて、気が付いた時には馬狼の腕の中だった。


突然の出来事に動揺してしまい、情けない声が漏れ出る。

あったかい、意味わかんない…馬狼の心臓凄いドキドキしてる、待って待って待って。



「……クソ……俺から言うつもりだったのに先走ってんじゃねぇ…！」

「……は…、え…っ？」


何を言っているのか分からず、顔を上げると馬狼の顔は真っ赤に染まっていて。





待って欲しい。

お願いだから、待って。


きっとその先の言葉を聞いたら、泣いちゃうと思うから。





「好きだ名月……いや……A。…俺が世界一になる時は、お前に隣に居て欲しい。」


そう言ってあたしの頭を優しく撫でる手つきがあまりにも優しくて、やっぱりあたしの目からは涙が溢れ出た。


「あ？何で泣いてんだよ…！？」

「だって……だってぇ………っ！」



嬉しすぎて言葉にならない。こんなの初めてだ。

泣きじゃくりながら馬狼の首に抱きつくと、力強く抱きしめ返してくれる。その事実が、本当に両想いなのだと実感させてくれて、更に嬉しくなった。


あーあ、顔面ぐちゃぐちゃになっちゃうじゃん…ブスだって笑われちゃう……


でもそんなあたしを見ても馬狼は愛おしそうに見つめてくれるものだから、あたしの涙は暫く止まってくれなかった。

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