飴と狼くん。【馬狼照英】

◆飴37個目 ページ38

「あ"ーーーー……！！！」


…その日の夜。あたしはベッドに転がりながら悶えていた。
手にはスマホを持ち、馬狼とのトーク画面を開いて。


「う"〜〜……『今日見てたよ。カッコよかった』…いや送れない…送れる訳無い…！！！」


何度も文章を作っては消し作っては消してを繰り返し、かれこれ30分以上はこの状態が続いている。

まず連絡つくかも分からないのに。何してんだろ……。



結局あたしは決心がつかず、スマホを置いて枕に顔を埋めた。

その時だった。

スマホが震え、通話の呼出音が鳴り響く。


また彩華かな…どしたんだろ…なんて思いながら画面を見ると、


「は……はぁ……っ？はぁぁ…！？」

そこに出ていたのは馬狼照英の文字で。


え…何？何で？どういう事？

もし誰かがイタズラでやってるなら悪質すぎて引くレベルなんだけど？？

驚きのあまり固まっていたが、鳴り止まない着信音に我を取り戻し慌てて応答ボタンを押す。


「も、もしもし……？」

『……出るの遅せぇ…。何してたんだよ』

「馬狼……本物の馬狼…？」

『あ？声で分かるだろ。馬鹿か？』




………………駄目だ、好きだ………。


ちょっと離れた程度で諦める、なんてほざいた癖に。

声を聞いただけであたしのちっぽけな決意はドロドロに溶かされてしまい、泣きそうになる。

それから暫くの間、沈黙が続いた。
話したい事は山ほどあったはずなのに、いざとなると何も出てこない。


先に沈黙を破ったのは馬狼だった。

『…なぁ飴女。明後日開けとけ。』

「……え……あ、明後日？……学校あるんだけど」

『一日くらい休んでも大丈夫だろ。……頼む。』


「……分かった…」

『よし。10時頃に迎えに行くから駅で待ってろ。』


じゃあな、と言ってすぐに切られた電話。


誘われた…馬狼の方から…。

嬉しさと緊張でどうにかなってしまいそうだ。


とりあえず明日、朝一で彩華に報告しよう。

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