飴と狼くん。【馬狼照英】

◆飴34個目 ページ35

「世界一のストライカーを作り上げ…？全国の高校生FW300名を招集……ってまさか」


3人は開いた口が塞がらない、といった様子であたしを見る。

「…そう。多分だけど馬狼、これに選ばれたんだよ」

記事には"若き才能の原石達を世界へと羽ばたかせる！青い監獄とは！？"と書かれている。


記事をじっくり読んでみたけれど、色々と現実味が無さすぎてよく分からなくなった。

え、これ、いつ帰ってくるんだろう？

あたしは勝手に卒業までの残り少ない時間を、馬狼と過ごせるものだとばかり思っていたから。


「……A…。とりあえず馬狼が無事だって分かっただけで良かったけどさ、ちょっと寂しいね」

「……うん」

「確かに。何だかんだクラスに居るのが当たり前だったし、掃除の時とかもあいつ居ないと中々進まないし」

「そうだね」

「このプロジェクト期間とか書いてないし、いつ終わるかも分かんないのかぁ……」

「分かんないね」


…このまま気持ちを伝えられないまま卒業、なんて事になったらどうしよう。

あの日…放課後に一緒にご飯を食べに行った日の事を思い出す。


あの時に告白していれば、何か変わったのだろうか？



「……いや、違うわ」


馬狼の夢はあくまでもサッカーで世界一のキングになる事。
だとしたらあたしがそれを邪魔するのは違う。

今更、想いを伝えられても迷惑になるだけだろう。



「あたし、諦めるわ…馬狼の事」

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