飴と狼くん。【馬狼照英】

◆飴24個目 ページ25

「なんだお前、関係無ぇ奴は引っ込んでろよ」

「ば、ばろ…う……ったすけて…」

蚊の鳴くような声で言うと、馬狼は無言であたしの腕を掴んでいた男の手首を掴み返し、思い切り捻り上げた。

「いででで！！な、何すんだこのクソガキ……！」

「女一人相手に大人数で寄ってたかって恥ずかしくねぇのかよ。」

高校生らしからぬ体格と威圧感に怯んだのか、男は手を振り払い逃げていった。


「………ハッ。クソ雑魚共が。」

「……ありがと。…なんでここにいるの？」
「天道がお前を一人にすると悪い男に絡まれるってうるせーから仕方なく来てやったんだよ。」

…初めて会った時もこんな感じだったっけ。
一人で泣きそうになってるあたしを見つけてくれて、助けてくれて。

「…じゃあ行くからな。電車すぐ来るだろ。」

大っきい背中。あの時と、同じ。



「………待って馬狼！！」

「あ？」

「……ご飯付き合ってよ」



…ヤバい、あたし今さっきのナンパと同じこと言ってない？


「は？」

「…だから…い、一緒に、夜ご飯！」


勇気を出して誘ってみた。心臓がバクバクして痛いくらい鳴っている。
断られると思ったけれど、馬狼は黙って歩き始めた。


「……食ったらすぐ帰るぞ。」

「え……良いの！？」
「テメェが言い出したんだろ。」


あたしが追いかけるように歩き出すと、馬狼はペースを合わせるように隣に来てくれた。
それが嬉しくて、胸の奥がきゅっと締め付けられるように苦しくなる。

「……馬狼」
「あ？何だよ」
「……飴あげる。」
「は、またかよ。仕方ねぇから貰っといてやる。」

あの時と同じままなんて嫌だ。もっと馬狼の事が知りたいし、もっと近付きたい。

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