飴と狼くん。【馬狼照英】

◆飴22個目 ページ23

「なんもしてない。おはよ」

「そっか……ってあれ、飴食べてないの珍しいね！あっきーいつも退屈してる時飴食べてるのに」

「え……あ」


言われてみれば食べてない。

というか彩華の言葉を聞いて気づいてしまったのだが、あたしは馬狼と居る時だけは飴を 食べなくても 済んでいる。彩華や他のクラスメイトと話している時はずっと飴を舐めてるのに、だ。

そう思うと、途端に恥ずかしくなってきた。


「……え、えっと、ちょっと喉渇いてるから……今は飴要らないかな……みたいな？」

「……ふぅん？そうなんだ？てっきり馬狼と居る時は緊張か何かして食べらんないのかと思ったよ」

あたし達の会話が聞こえたのか、隣の席のうっさい奴まで割って入ってくる。

「そういや名月、棒付きの飴は特別な人にしかあげないって言ってたのに昨日あげてたよな、馬狼に」

「あ、え？？え、」


………………マジで彩華といいこいつといい何！？本人の前で余計な事ばっか言わないでくれる！？

「……そんなルールがあんのかよ。」
「……！！！ちが、ちがうから！」

ほら、絶対変な勘違いされてるじゃん！

「はいはい、もうその辺にしときなよ〜」
「おー、みんな集まった？」

クラスの男子が声を上げた。

「んじゃ出発しますかね！」
「行くぞー野郎ども！」

皆は歩き始める。彩華はそそくさと前の方に行ってしまい、残されたあたしと馬狼は最後尾を歩いていた。

「…馬狼、マジで変な勘違いしないでよね」

「しねーよ。くだらねぇ。」

「……そっ、か。……でも、もし……」

「あ？何だよ」

「……何でも、無い。」



勘違いじゃなくて本当だよ、ずっと馬狼の事が好きだった。なんて言えるわけが無い。

今は赤くなった顔を隠してくれるマスクの存在に感謝した。

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