◆飴16個目 ページ17
「おい飴女、お前どこ行ってたんだよ。もう始まるから早く来い」
「ごめん馬狼、トイレ行ってたら遅れたわ」
あたしは馬狼に急かされるままリレーの定位置に向かう。
「……っ」
どうやらあの子を助けた時に右足を捻ってしまったようで、少し歩くだけでズキっと痛む。
けれど走れない程じゃない。大丈夫、100mくらいなら問題無く走れるはずだ。
バトンを受け取る為の位置につき、スタートの合図を待つ。
(大丈夫、大丈夫……)
自分に言い聞かせているうちに、ピストルの音と共に競技が始まった。
1番目の走者が走り出し、あたしとの距離がどんどん縮まっていく。
……速い、もう来る。
彼女は他チームとかなりの距離を離しながら駆けて来た。あたしはバトンを受け取る準備をしながら、テイクオーバーゾーン内を進む。
「秋奈ちゃん!!」
パシッと差し出されたバトンを受け取り、右足で地面を強く蹴った瞬間、鋭い痛みが身体中を走り抜けた。
(……ッ……!!!)
あたしはなんとか我慢しようと歯を食いしばり、そのまま走り続けた。
「はぁッ、は……っ、はぁ……っ!」
それでも足の痛みが消える訳もなく、右足で踏み込む度に激痛が走った。
チンタラ走っている間に、かなり空いていた他チームとの差は埋まり、追い抜かれていく。
……だめだこれ、負け確じゃん。
3番目の走者がびっくりしたような顔であたしを見ていた。そりゃそうだよね、練習の時は普通に走れてたし。
バトンを渡す頃には周りのチームはずっと先を走っていて。
「マジかぁ…」
「………ごめん…っ」
俯いたままバトンを渡し、コースを外れる。
…でもまだ、可能性はある。馬狼が居るから、まだ……
息を整えながら顔を上げたあたしの目に映ったのは、諦めたように走る3番目の走者だった。
「…………。」
「Aー!!もしかして怪我してるの…!?」
彩華が走って来てくれて、心配そうな目でこちらを見る。
「……ごめん、大丈夫だから。」
あたしのせいで勝ちを諦めさせてしまった。
申し訳なさと悔しさが入り混じった気持ちでいっぱいになり、柄にもなく泣きそうだ。
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39893 - 匿名希望さんのお話、他にも見てるんですが、全部いいお話ばかりです!いつもありがとうございます! (10月18日 22時) (レス) @page50 id: e8da3276d0 (このIDを非表示/違反報告)
羽鶴(プロフ) - 完結おめでとうございます。スウウウーーーーーッ……まっっじで最後まで最高でした!!!!!!ばち好みの作品で更新の度発狂していました…今までお疲れ様でしたこれからもがんばってください!!!!!!最高でした!! (7月20日 23時) (レス) @page50 id: fcd2bda98b (このIDを非表示/違反報告)
あげ豆腐(プロフ) - 完結おめでとうございます!!こんなにもいい神作品を見させてくださって本当にありがとうございます!次回作も楽しみに待ってます😊 (7月20日 23時) (レス) @page50 id: 417163fa8e (このIDを非表示/違反報告)
匿名希望(プロフ) - ぱんぱーすくんさん» 完結しました!ありがとうございます!!😭🙏ツンデレキング、良いですよね…まず公式があざとい…🤝ほぼ自己満になっちゃってましたが、楽しんで頂けたなら良かったです……! (7月14日 9時) (レス) id: 733e983a69 (このIDを非表示/違反報告)
ぱんぱーすくん - 完結おめでとうございます!馬狼くんのツンデレほんっと可愛いです!!!馬狼くんの夢小説かいてるひと少ないの素敵な作品かいてくださってありがとうございました🙇🏻♀️💦 (7月13日 23時) (レス) @page50 id: 3f84d09ede (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2023年6月18日 1時