飴と狼くん。【馬狼照英】

◆飴11個目 ページ12

グラウンドに着くと既にリレーメンバーが集まっていた。


「遅いぞ馬狼ー！練習始まんぞー！」

「うるせぇ。飴女連れてきただけだ。」


軽く準備運動を済ませ、走順を決める為にタイム測定を行う事になった。

「名月って走れんの？」
「んー…走れなくは無い程度」
「Aちゃん運動嫌いそうなイメージあったからリレー出てくれるの意外だなぁ」


リレーメンバー達からすればあたしのようなギャルが走るのは不思議でしかないだろう。

「足でまといになんないように頑張るわ」


先生の指示に従い、100mのタイムを測定していく。


「……名月って何かスポーツとかやってたの？」
「何もやってないよ。オール帰宅部。」
「なのにこの記録！？速いね…陸上部入らない！？」
「えー……いいかなぁ……」

陸上部に入部しないかという誘いを受けるが、丁重に断らせてもらった。

部活に入るほど運動好きじゃないし、馬狼を眺めてる方が何倍も楽しい。

「次ー、馬狼！」
「おう。」

馬狼がスタートラインに立つと、辺りはシーンと静まり返った。

スターターピストルの音と共に、彼の走り出す音が聞こえる。

(カッコイイ〜〜〜…)

思わず頬が緩む。
あっという間にゴールテープを切り、息一つ乱さず涼しい顔で戻ってきた。

「やっぱ速ぇ〜〜、三年間体力テスト全種目一位なだけあるわ」
「馬狼くん居てくれたら安心だぁ」

リレーメンバーの二人がはしゃいでいる。その隣で興味無いフリをしながらマスクで緩んだ顔を隠していると。


「…お前、さっきから何ニヤついてんだ」

「んぇ！？！」

あたしの方に一直線に向かってくる馬狼に声を掛けられる。

「べ、別にニヤついてないんですけど！！」

「あっそ。」

彼は興味無さげに返事をして、自分の定位置に戻って行った。


「おい、俺がアンカーだ。」

先生にそう言い放つ馬狼。1年の頃から目立ちたがりっていうか堂々としてるっていうか…自分の事キングって言ってたりしてるし。


でもそういう所含めて好きになってしまったのだから、仕方ない。

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