飴と狼くん。【馬狼照英】

◆飴10個目 ページ11

後ろ髪を引かれるような思いで馬狼の後を追うと、廊下に出たところで彼が口を開いた。


「お前、何でいつも飴ばっか食ってるんだ。」

「へっ？ああ、なんて言うか精神安定剤的な…舐めてないと落ち着かなくて」

「ふーん……。」


めっちゃ興味無さげな返事するじゃん。
突然話しかけられて驚いたものの、何とか返答することができた。



「…やる。」
「……は？」


馬狼がぶっきらぼうに差し出してきたのは、いちごミルク味のキャンディだった。


「……なにこれ」

「見りゃわかんだろ。飴だ。」



え、え、どういうこと？？これは夢？？現実？？ あたし今、好きな人からお菓子貰っちゃってる感じ？？

脳内処理が追いつかない。


固まっているあたしを見て、馬狼は痺れを切らしたのか強引に手を取って握らせた。

「〜〜〜〜〜ッッッッ…！？！？」
「今朝妹が無理矢理ポケットにねじ込んできたんだよ…後で食うつもりだったが、お前にくれてやることにした。」

馬狼の妹さんグッジョブすぎるんですけど？


「ありがと……」

「フン…さっさと行くぞ、飴女。」


素直にお礼を言うと、馬狼はスタスタと歩き出す。

「…………ちょ、飴女って何？？？」

大っきい背中を追っかけて、隣に並ぶ。
…大きくて男らしい手に、手どころか心までぎゅっと掴まれてしまったような感覚。

精神を落ち着かせようと貰ったキャンディを口に放り込むと、甘い味がじんわりと広がっていった。

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