傷だらけ二年生が友人に囲まれるまで (ページ8)

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音を抑えてカップが置かれる
トレイが置いたそれには甘いミルクティーが入っていた
玄関からひとまずリドルの部屋に移動したがテルは未だ様子がおかしい
ここまで来るのも途中からケイトが無理やり抱えて来た

「あ、う、だいじょうぶ、だいじょうぶ、だいじょうぶ」
「テル、テル、聞こえるね？ほら落ち着いて、落ち着くんだ」
「りどるくん、ぼく、大丈夫、へいき、平気」
「ああ、そうだね。君は大丈夫だ、もう怖い人は居ないからね」

テルは強引に口角を上げ、失敗した笑顔を浮かべて「だいじょうぶ」と呟く
どう見ても正気とは言い難い顔にリドルは思わず顔をしかめた
目線が合うように前に膝を付いて顔を覗く
引きつった口元とは対称的に見開かれた目は怯えていた

「テル、何があったのか僕に教えてくれるかい？」
「おかし、お菓子、もってきて、えっと」

テルが鞄から購買のシールが付いた袋を出す
中身は少し潰れたスコーンが数個
ノートを買いに行った時に見つけてリドルに分けようと来たらしい
リドルの部屋までの道が分からず連絡して聞こうとした所だったという

「3年生が因縁付けて来たんだって？」
「ケイト、見ていた生徒から聞いたのかい？」
「うん。リドル君のお気に入りだろって絡んだらしいよ」

ケイトによればハーツラビュル寮の3年生が
『リドルに気に入られて調子に乗っている部外者』と言いがかりを付けたそうだった
その生徒は何かやらかして教師に叱られた後
気が立っていた所で目に付いたテルに八つ当たりしたのだろう
それを怖がったテルが逃げようとしたのを肩を掴んで引き倒した
そして尻もちをついたテルが震え始めた
それがリドルが駆け付けるまでの経緯だった

「お菓子を持ってきてくれたんだね、怪我は無いかい？」
「けが、けが…へ、いき、大丈夫」
「…そう」

テルは視線をうろうろと漂わせて言う
まだ痛いのかも知れないと思いつつリドルはとりあえず頷いた

「トレイ。連れて行った生徒の様子は？」
「不貞腐れてはいるが暴れたりはしない、後で説教に行ってやれ」
「当然だよ。我が寮生にあるまじき行為だ」

行ったら首をはねてやろう
言外にそう滲ませる声でリドルは言った
トレイはそれに頷いてテルの方に目を向ける

「ヴィルに連絡したぞ、迎えに来るそうだ」
「りょうちょう」
「ああ、寮長だ。怖くないだろ？」
「こわく、ない」

話の受け答えが出来るまでになったテルに3人は安心する
3人が息を着く
それと同時に談話室のドアがノックされた