傷だらけ二年生が友人に囲まれるまで (ページ21)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:22,511 hit

21 ページ21

「助かった、みんなありがとうな」
「感謝するんだゾ！俺様たちずっと見ててやったんだからな！」
「グリム途中で飽きてマンガ取りに行ったろ」
「わー！秘密なんだゾ！」
「まあまあ、それくらいなら誰も怒んないって」
「怪我人の部屋の前だよ、静かにおし」

リドルの一括に騒いでないはずのセベクとオルトが「すみません」「はーい」と小声で言う
テルを任せて行ったリドルたちは夜と呼べる時間になってから帰ってきた
何故かジェイドも追加されて帰って来たのには全員びっくりした
デュースは待っている間

「まさかカチコミに行ったのか…！？」
「なら僕も手伝えるのに…」

と言っていたが帰ってきた面々にはかすり傷すら見当たらない
どうやら違うらしいとデュースは監督生の隣で安堵していた

「ジャック、エペル。あの子の様子は？」
「いつの間にか眠ってました、暴れたりとかはして無いです」
「口を開けてくれなくてご飯は食べてもらえて無いですけど…」
「見ていてくれただけで充分さ、ありがとう」
「ヴィルさん、一応だけどテルさんの様子を記録してあるよ」
「途中で買いに行ったゼリー、テル先輩にどうぞ」
「ええ。オルトとセベクもお疲れ様、感謝するわ」
「皆さんお疲れ様でした、説明は僕からしますのでこちらへ」

ジェイドがスッと前に出て手招きする
既に説明する時にとヴィルが談話室を借りていた
一年生たちは着いて行って良いのか、と迷ったように一瞬お互いの顔を見合わせていた
普段が普段なだけに怪しまれているらしい
だが監督生とグリムが最初に歩き出したのを見てぞろぞろ着いて行く

「ジェイド、説明は頼んだぞ」
「ええ、お任せください。では失礼します」

姿勢の良いお辞儀をしたジェイドは一年生を連れて歩いて行った
その背中を残った面々は黙って見送る
廊下はしばらく静かだったがヴィルがハーツラビュル寮の三人に

「テルの顔だけでも見て今日は休みましょ」

の言葉にリドルを始めとする三人は頷いた
テルは眠っていると聞いている
なるべく音を抑えてそっとドアを開けて中に入った
元が誰も使って居ない空き部屋なので家具類はほとんど無い
ただ広いだけの部屋の中にあるベッドにテルは居た
眠っているが寝息すら聞き取れないほど弱々しい
リドルはボロボロの寝顔にしばらく何を言うか悩んで口を開いた

「終わらせてきたよ、ただいま」

返事はもちろん無い
それでもリドルにとって長く忙しい一日はその言葉でゆっくり終わって行った