傷だらけ二年生が友人に囲まれるまで (ページ3)

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「ねえ、これ何？きらきらだ」
「タルトだよ、乗っているのはイチゴ」
「こっちは何ていうの？なんだか可愛いね」
「カップケーキだね。ブルーベリーの味がすると思う」
「あ、ぶるーべりー聞いた事ある」
「食べてみようか」

無邪気にスイーツが乗った皿や台座を見ているテルにリドルは取り分けを始める
彼との初のお茶会で分かったのは思っていた以上に無知であることだった
並べているお茶菓子のどれにも覚えが無いらしくもちろん食べたことがない
そもそも角砂糖以外の甘いものをよく知らないと言う
だから食べても良いか分からない、と笑う姿がひどく寂しそうで幼い頃の自分と重ねてしまった

「ん、んーん、んー」
「こら、話すのは飲み込んでから」
「んー」

普段はどこか虚ろにすら見えるぼんやりした目をぱちぱちさせてテルは何か言おうとする
軽くリドルが注意するとこくこくと頷いた

「これ、美味しい、すごいね」
「そうだね。トレイの腕は凄いから」
「トレイ、さん？」
「そう、ハーツラビュル寮の副寮長だ」
「クローバーさんだ、それなら分かる。緑のひと」
「ケイト・ダイヤモンドは分かるかい？紅茶を淹れたのは彼だよ」
「へえ、オレンジのひとだよね」

カップケーキを食べ終わったテルが心底楽しそうに感想を言う
どうにも彼は人名を苗字の方で覚えている
仲良くなったリドルは名前で呼んでいるがその他の人物は苗字で呼ぶ
それが何となく特別扱いというか友人の印のようでリドルは嬉しかった

「今度トレイとケイトを紹介するよ。僕が個人的に気に入っている後輩たちも」
「本当？リドル君は友達が多いんだね、すごいな」
「そんなに多くは無いよ、ただ信頼を置ける相手が複数居るだけさ」
「それがすごいんだよ、羨ましい」
「そうかな・・・ああ、そうだ、忘れる所だった。テル、これを食べたらチェスでもしないかい？」
「ちぇす…ああ、あの馬とかのお人形の」
「そうだよ。良ければルールを教えようか」
「良いの？やってみたい、楽しみだな。むかし、母様と父様が…」

そう言いかけてテルは「あ、いや…ごめん、何でもない」と笑う
リドルは追及したい気持ちを押さえる
ここで無理に聞いて傷つけてしまうのは嫌だ
いずれゆっくりと、本人が相談してくれるくらいで良い
本当に困っているようだったら手を差し伸べればそれで良いのだから
取り繕うように何とか笑顔を浮かべてリドルはテルのカップにお茶のお代わりを注いだ