傷だらけ二年生が友人に囲まれるまで (ページ19)

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バタバタとした足音が廊下から近づいてくる
勢いよくドアが開いた医務室にヴィルとルークが入ってきた
ケイトがぶんぶんと手招きして二人を傍に呼んでいる

「ヴィルくんルークくん、こっちこっち」
「ちょっとどうなってるの、説明してちょうだい」
「テルくんは無事かい？せめて顔を見せておくれ」

トレイがテルが寝ているベッド周りのカーテンを開けて二人を迎え入れる
顔は包帯とガーゼでほとんど覆われ、腕も包帯で素肌が見えない
保険医が深刻そうな顔で持ってきた怪我の一覧をヴィルが受け取る
痣が多数、背中に何か打ち付けた跡、タバコを押し付けたらしい火傷
腹にある痣が大きいので骨の方のダメージが心配
だからこれから病院に行くと保険医は話す

「ねえ…これ、帰ってきたらこれだったなんて言わないわよね」
「残念ながら…」
「…」

ルークが無言でテルの手を取る
自寮の先輩、それも顔見知りが来ていても目も向けない
ぼんやりした瞳を天井に向けて微動だにせず
握られた手にも反応が無い
ここまで弱っていると確かに病院に運ばれるのも納得だ

「一応だけど先生にも連絡入れといたからね」
「ああ、助かる。ありがとうケイト」
「実家への対応が甘かったわ、もっと口を出すべきだったわね」
「今からすれば良いさ、私も協力させてもらうよ」

周りの三年生達が話し合う間、リドルはただ黙っていた
教師陣の静止なんて聞かずに家まで行けば良かったのか
それとも無理を言ってでも帰るのを引き留めるべきだったのか
連絡して欲しいと言っておきながらいざという時に助けられなかった
ここまではしないだろうと勝手に思いこんでいたからだ
傷は増えるだろうがちゃんと帰ってきて
それを先生に見せていかに実家が危ないか教えて
どうすれば帰らないで済むかを考える
分かりやすい新しい怪我を理由にそんな話に持っていこうとした
考えが甘かったんだとリドルは悔やんだ
後悔ばかり頭に浮かぶ

「…リドル、お前は間違った対応をしてないからな。大丈夫だ」
「リドルくん、先生が来たらどうするか話し合おう？出来る？」
「…うん、当然だ」

トレイとケイトの言葉にいつの間にか流れていた悔し涙を拭う
ひたすら嘆いて憐れんでいても仕方がない
これ以上の被害を防ぐのが先だ
もう一度テルの顔を見る
無表情と包帯とガーゼだらけの姿、冷たい手
壊れて補修される途中の人形じみている
少しでも衝撃を加えたら粉々になりそうで痛々しい
もう絶対に傷つけないとリドルは決意を固めた